読了本ストッカー:『夜の子どもたち』芝田勝茂/福音館土曜日文庫


児童書の優れたブックガイドはいろいろと読んできたのですが、最新のものとなるとなかなかありません。
大人が書くとどうしても現代文学寄りになるし、ハードカバー以外のものまで網羅するとなると難しい。
そんな中、Twitter経由で「児童書読書日記」というブログを知りました。読んでみると、全然知らなかった面白そうな作品が盛りだくさん!
過去記事を漏れなくチェックさせていただいているのですが、その中で下記のような記事を見つけました。

2016年の児童文学 - 児童書読書日記
http://d.hatena.ne.jp/yamada5/touch/20170120/p1

曰く「日本児童文学のアンダーグラウンドに脈々と流れる暗黒ファンタジー・暗黒SFの系譜」として紹介されている『夜の子どもたち』! お、面白そう! ということで、早速読んでみました。

確かに暗黒ファンタジー!あの『光車よ、まわれ』の系譜ですね。ヒロインも「ルミ」だし、なんかオマージュ、とか?
なんといっても、巻頭の「八塚」の地図が燃える!

主人公は心理学を学び、カウンセラーを目指す大学生森山正夫。地方都市八塚で、年令も、学校も違うのに揃って登校拒否になった五人の子どもたち。
彼らのカウンセリングを、カウンセラーへの予備審査を兼ねて担当することになった正夫は、八塚へ赴き、審査官である曾根ルミネとともに、カウンセリングを開始するのですが……。

1985年初版ですので、30年以上前の作品ですが、なんか時代が巡って現代化したというか、時代の不穏な空気が現代性をもったというか、舞台である日本の様子が、2017年の今と重なるのが怖いです……。

八塚市には特徴的な条例がいくつかあり、もっとも異例なのが「夜間外出禁止条例」。
大人も、子どもも夜間の外出は文字通り禁止されているのですが、強制されずとも自発的に人権や意志の規制に従う。その結果として、非行ゼロなどの結果が出るわけなので、別に反対する理由もない。そうして淡々と制限が増していく。とてもゾッとする感覚です。

「いいことだから、仕方ないんじゃない?」「悪い人を規制するためには、仕方ないんじゃない?」そうやってなんとなーく「八塚市化」していること、ないでしょうか?

ま、そんな現実へのコミット具合はどうでもよく(はないけども)て、謎を心理学的に解明したかと思いきや、伝奇的な事実が判明し、おーそういうこと?とと思わせておいて、政治的な陰謀っぽくもなってくる。SFっぽさもでてくる、と真相が二転三転して面白いです。

上記の「児童書読書日記」様の記事によると、改訂版やアップデート版などが存在するらしいので、全部読んで見なければ!