読了本ストッカー:「つねに犠牲のための場が必要だ」……『ミネルヴァのふくろうは日暮れて飛び立つ』

ミネルヴァのふくろうは日暮れて飛び立つ (文春文庫)


ジョナサン・ラブ


文春文庫


2008/2/22読了。


 


本書は珍しくブックガイドに頼らず自分で見つけたもの。古本屋でタイトルを見て「お、笠井潔?(ヘーゲルと思わないところがバカ)」と思い、手にとって見たのでした。
裏表紙の解説を見ると・・・



マキアヴェッリを超える、究極の支配マニュアル、<至上権利論>。(中略)・・・手稿に従って世界制覇のプログラムが進行しはじめたのだ。


・・・伝奇だっ!伝奇に違いない!しかしそこは105円棚ではなかったので、またあ~う日ま~で~♪(涙くんさよなら)したのでした。


こうなるとなかなか再会はないもの。最近ようやく出会いました。いやあ1020円が105円だもんなあ・・・いい時代に生まれたなあ。


アメリカで、ヨーロッパで、水面下で進行するテロ計画。その中心にあるのは・・・手稿『至上権利論』。16世紀にものされたただの論文にすぎない手稿の存在がむちゃくちゃ魅力的。ありがちな(?)霊的な力とかがあるわけではないところがまたツボ。あくまで「至上権利論」という政治理論が、テロと有機的に結びついているのです。


最終章に、『至上権利論』の全文が載っている(!)ところがまた、伝奇マインドをくすぐります。いや~収穫でした。


上記の『至上権利論』の全文掲載とか、架空の書物の登場のさせ方とか、なんだか賛否両論あるみたいですが、本書の魅力のもう一つは登場人物。ただの(新進気鋭ですが)大学教員であるジャスパースが、今まで生きてきた世界とはまったく違う世界に巻き込まれ、否応なく変化していくところがなんとも言えません。ジャスパースが「あっち」の世界に行ってしまうのか、それともこちらの世界に戻ってこれるのか、サスペンスフルな作品です。


記述師的には五つ星です。