読了本ストッカー:天衣無縫なヴァンパイア!……『ヴァンパイア・レスタト㊤』

ヴァンパイア・レスタト〈上〉


アン・ライス  扶桑社文庫


2007/6/20読了。


夜明けのヴァンパイア』の続編となります。前作では脇役(?)だったレスタトですが、本作ではその生い立ちから描かれます。
1780年代、フランスのオーヴェルニュ地方に侯爵の末息子として生まれたレスタト。とても鬱屈した少年時代、青年時代を送ります。



そうやってしゃべっているうちに、たとえ死ぬときになっても、たぶんわたしたちには、なぜ自分がこの世に生を享けたのかわからずじまいなのだということが、青天の霹靂のようにわたしの上に襲いかかってきた。無神論者を公言する者でさえ、死ぬときには何らかの答えを得ることができると信じている。すなわちその瞬間に神は存在しなくてはならない。そうでなければ、すべては無になってしまうではないか。


「死」について、「神」について、そして「善」について考えを深めるレスタトですが、勿論彼はヴァンパイアにされてしまいます。その力を以って人間たちの間で暮らし始めるレスタト。それを妨害しようとする集団もあります。



「いいか、われわれは神の意思により悪としてこの地球に存在している。神の栄光のもとに人間たちを苦しめる存在として、そして同じように神の意思により、神聖を冒せば滅ぼされ、地獄の大桶に投げ込まれる。なぜならわれわれは呪われた魂の持ち主であり、われわれの不死は苦痛と犠牲を払ってのみ得られるものだからだ」


「こいつらの所業のおかげで、この国じゅうとはいわないまでもこの街じゅうに、われわれを敵視するほどの恐怖が引き起こされている。われわれが何世紀ものあいだ、この大都市でひっそりと狩りをして、ほとんど息をひそめるようにしかわれわれの力を使ってはこなかったというのに。われわれはこの世をさまよう者であり、夜の生き物であり、人間の恐怖をたきつける存在なのだ。馬鹿騒ぎをする魔物などではなく!」


ヴァンパイアの組織も「神」の論理により支配されているのが、いかにもキリスト教圏の作品らしいです。


その他にも「ヴァンパイアは十字架が苦手か?」「ヴァンパイアは鏡に映るのか?」などなど、ヴァンパイア作品のお約束にも触れられています。


記述師としては『夜明けのヴァンパイア』よりも圧倒的にこちらのほうが面白かったです。下巻に期待。


最近読んだヴァンパイアものでは『夜刀の神つかい 1 (1)』シリーズが、最高に面白かったです。「種の拡散分布と血液の安定供給を維持するためのカウンターアベレージ計画」ってのが・・・かっこよすぎるネーミング(笑)。
あとは『銃夢Last Order 10 (10)』でしょうか。9巻だったか、8巻だったか・・・ヴァンパイアの生態の設定ページで、「心臓にくいを打ち込む→誰だって死ぬ」というのが笑えました。そりゃそうだ。