読了本ストッカー:魔術師はジョークがお好き?……『ムーンチャイルド』

ムーンチャイルド
アレイスター・クロウリー  創元推理文庫


2007/5/25読了。


ブックオフで『ラヴクラフト全集3』と共に発見。その筋(?)の人が放出したと思われる(笑)「二十世紀最大の魔術師アレイスター・クロウリー畢生の大魔術小説(解説より)」です。
朝松健氏の『邪神帝国』にクロウリーが載っていたので、なんとなく<クトゥルー>つながりだと思って買ったのですが・・・当然ながらなんの関係もありませんでした。


まあ著者が「魔術師」ですから、読みにくいことこの上ない・・・主人公のシリル・グレイは「若者としてのクロウリー像(訳注より)」だし、師匠のサイモン・イフは「老人としてのクロウリー像(同)」だし。語りはあくまでもクロウリー本人。要は自分の言いたいこと、鬱屈した(かどうか知りませんが)思いを語り尽くした作品といえましょう・・・。


これって基本的にギャグ小説じゃないでしょうか? 悪の組織「ブラックロッジ」の構成員はS・L・メイザースやW・W・ウェストコットなど、実在の魔術師をモデルにしてますし、その攻撃は「妖術、死霊術と非道の限りを尽くした敵の攻撃は、とどまるところを知らない(解説より)」と書かれていますが、失敗ばかり! 攻撃しては自滅を繰り返します・・・。
見返しの人物紹介でも



アースウェイト・・・・・・・・・馬鹿


って!まあ終始こんな感じです。


科学を否定しつつ科学的な物言い(分子がどうとか電子がどうとか)をするところが、なんとなくシュタイナーの諸作につながるものを感じてしまって、苦手。



ゆえに、太鼓を打ち鳴らすことで嵐を呼ぼうとするのを“馬鹿げている”と言ったところで、それは儀式魔術に対する反論にはならない。自分でその実験をやってみて、うまくいかず、ゆえにそれが“不可能”と感じたと主張するのも公正とは言えない。いっそのこと、絵の具とカンヴァスを用いてもレンブラント級の作品を描けなかったという理由で、レンブラントの作品とされている絵画はまったく異なる手段で作製されたのだ、と主張してみるがよい。


親殺しの頭蓋骨がどうして死人を蘇らせるのに役立つのか、その理由はわからないだろうが、それは温度計の水銀がなぜ上下するのかわからないのと一緒である。(中略)そしてたいていの人は、親殺しの頭蓋骨の助けを借りて死人を蘇らせることはできないが、それは彼らがクライスラーのようにヴァイオリンを演奏することができないのと同じである。


そりゃ屁理屈だって・・・。


いろいろ書きましたが、面白かったですよ~(?)。



「では、宗教とはなんぞや? 魂それ自体の神聖なる法悦における達成である。生は愛なり。そして愛は笑いなり。換言すれば、宗教は冗談だ。ディオニソスの精神もあれば、パンの精神もある。しかし、これらは笑いの二局面にすぎない。宗教は冗談なり」