読了本ストッカー:柳生一族の陰謀?!(いや、全然違いますけど・・・)……『柳生非情剣』

柳生非情剣


隆慶一郎   講談社文庫


2007/3/23読了。


柳生刺客状』に続いて、隆氏の短編集。こちらはタイトルどおり全編柳生一族が主人公となる作品集です。



「慶安御前試合」
・・・柳生新陰流五代の道統を継いだ兵助、のちの柳生連也斎の物語。隆氏得意の裏柳生・義仙も出てきます。将軍家光の御前で、江戸柳生総帥・柳生宗冬と試合をすることになった兵助ですが・・・。最後に実在の文献を出すことで物語をうまく完結させるとこが伝奇小説!


「柳枝の剣」
・・・柳生宗矩の次男、左門友矩を描く物語。兄の十兵衛を上回る才能を持ちながら、家光との恋(!)によって自らの命を縮める左門。まさか左門が十兵衛の○○を○○したとはねぇ・・・さすが伝奇!


「ぼうふらの剣」
・・・柳生宗矩の三男、又十郎宗冬を描きます。私見ですが、隆氏は宗冬が一番のお気に入りに違いない!『柳枝の剣』でもその感じはありましたが、本編で炸裂です(笑)!そういえば『吉原御免状』でもいい人でしたもんね、宗冬。それにしても巷説柳生最強の男、十兵衛の剣力ランキングがどんどん下がるなあ~。


「柳生の鬼」
・・・ここで万を侍して巷説柳生最強の男、柳生十兵衛三厳の登場だあ!ちらと名前だけ登場する柳生主馬なる人物が、異人種と書かれていたため検索してみると、韓国の人みたいですね。荒山徹氏の『十兵衛両断』にも出てくるみたいです。それにしても、さすが十兵衛。かっこいい~。最強の爺(笑)野方甚右衛門と“あほの太平”もかっこよすぎる。


跛行の剣」
・・・柳生石舟斎の嫡男、新次郎厳勝の物語。漫画『天上天下』でも佐野主馬として活躍してましたね。石舟斎と新次郎のせめぎあいが凄まじい作品です。


「逆風の太刀」
・・・記述師は寡聞にして知りませんでした、柳生五郎右衛門宗章が主人公。石舟斎の四男だそうです。小早川秀秋に仕えていたため、浪々の身となってしまいますが、なんといっても柳生一族。凄まじい剣撃です。


こうしてみると、柳生一族は誰をとっても絵になると言うか、隆氏が入れ込むのもわかりますね。


本書では柳生十兵衛はかたなしでしたが、山田風太郎氏の十兵衛三部作(?)『魔界転生』『柳生十兵衛死す』『柳生忍法帖』を読んで、最強十兵衛復活を味わいたいです。