読了本ストッカー:「あんたの捜査は外道だ」……『第三の時効』

第三の時効


2007/2/26読了。


横山秀夫氏の作品は『陰の季節』『動機』に続いて3冊目読了です。
この作品についてはもういろいろ言われ尽くされています・・・曰わく、D県警シリーズに代表される「管理畑」ものを得意とする横山氏が初めて第一線の刑事たちを主人公にして書いた作品。曰わく、一癖も二癖もあるF県警捜査第一課・強行犯捜査係の 一班班長“青鬼”朽木、二班班長“冷血”楠見、三班班長“天才”村瀬たちの設定の見事さ・・・エトセトラ。


それにしても、捜査一課といえば十津川警部と亀さんに代表されるように(?)信頼関係が第一ですが(極論!)、本作は刑事間信頼度ゼロ!まあゼロとは言わなくても、0.001くらいでしょうか。アマテラスとミラージュ騎士団レフトサイドみたいに“恐怖と力”によってつながっているわけです(例えが局所的に有効)。三人の班長のキャラも、「ほんとはいい人なんじゃないの?」という期待を微塵に打ち砕く凄まじさ。そのほうが面白いですけどね。


 「沈黙のアリバイ」・・・裁判で供述を翻した犯人のアリバイを追う“青鬼”朽木を描いた作品。文庫化にあたって、朽木がなぜ笑わなくなったのか、その事件について触れた部分が付け加えられています(解説によると)。
第三の時効」・・・表題作。15年前の殺人事件の時効、そのあとにくる、犯人の海外渡航によって生じる“第二の時効”、では“第三の時効”とは?第二班の応援に駆り出された一班の刑事・森は、二班班長“冷血”楠見の捜査方法に憤りを感じますが・・・かなり重い話です。
囚人のジレンマ」・・・本作の視点はF県警本部捜査第一課長・田畑です。第一班から第三班までがそれぞれ殺人事件に取りかかっている中、捜査本部間を捜査指揮車で回る田畑。記者たちの夜討ち朝駆けをしのぎ、言うことを聞かない班長たちに怒り・・・もう大変です。三人の班長たちに対して、


一般的な刑事の構えを「執念」「職人」「プロ根性」の類で表現するなら、彼らに共通するのは、「情念」「呪詛」「怨嗟」といった禍々しい単語群だろうか。


田畑は事件で食ったきたが、彼らは事件を食って生きてきた。


と思ってしまいます。しかし・・・ま、読んでのお楽しみ。
「密室の抜け穴」・・・三班班長・村瀬が脳梗塞で倒れ、班長代理を命じられた東出。同期の石上は反発するし、暴力団対策課は協力してくれないし・・・。ほとんど出てこないのに(脳梗塞ですから・・・)“天才”村瀬の凄さが垣間見れる作品です。
「ペルソナの微笑」・・・いつも笑った顔をしている一班の新人刑事・矢代。まったく笑わない朽木と対比させながら(重ね合わせながら)描かれます。ラストの矢代の絶叫(?)が心に残ります。
モノクロームの反転」・・・タイトルでちょっとネタが割れてしまいますが・・・そんなことは関係なく、一班と三班のデットヒートが描かれます。やはり筆頭班、朽木班長が一枚上手?