読了本ストッカー:“神と愛と光が全否定されている迷宮的な世界”……『夜明けのヴァンパイア』

夜明けのヴァンパイア


2/14読了。


映画『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』の原作です。実は映画は観たことないんですが・・・。ヴァンパイアを退廃的に描く代表的作品でしょうか。
心の赴くままに人間を狩るヴァンパイア・レスタトと、その“闇の子”にして、人間とはなにか、生とはなにか、死とはなにかを問い続ける思弁的ヴァンパイア(?)・ルイ。物語は、ルイが現代でインタビュアーに自分の人生を語るスタイルでスタートします。訳者の田村隆一氏の力もあるのか、とても読みやすいです。難解ですけど。


以前田中芳樹氏が「西洋のヴァンパイアは、たった100年くらいしか生きていなくても、すぐに退廃的になってだらしない。同じ不死者でも東洋の仙人は、花を愛でたり、酒を飲んだり、碁を打ったり、やることは山ほどあるので退廃的にはならない」といった意味のことを書かれていて、なるほどなあと思ったことがありますが、ルイは悩みまくります。一冊ずっと悩み続けです。しかも、一番生きているヴァンパイアでも400年って・・・若っ。


訳者の田村隆一氏のさすが詩人!の解説中の一文が、すべてを語ってくれています。


 そしてルイとクロウディアをヴァンパイアの血族にひきずりこんだ心の優しい復讐鬼レスタト、パリの黒ミサの主宰者アルマンとが変幻自在に大地の奥深い所からあらわれながら、殺戮、悪徳、罪、暴力、不死、闇の力を讃美しつづけて、滅びのない絶望、愛と栄光の抹殺をたからかに歌うことによって、この華麗な陰画の世界の環は、永遠にむかってダイナミックに完結して行く。


『ヴァンパイア・レスタト』も楽しみ。しかし、全くの別作品なんでしょうか?