読了本ストッカー:ミステリ+伝奇+偽史の好短編集……『凶笑面#蓮丈那智フィールドファイル#01』

凶笑面―蓮丈那智フィールドファイル〈1〉

2006/6/14読了。

異端の民俗学者・蓮丈那智のフィールドファイルシリーズの1巻目です。
“異端”“民俗学”とくれば宗像教授(from宗像教授伝奇考シリーズ)、兵頭北神(from北神伝奇シリーズ)、稗田礼二郎(from妖怪ハンターシリーズ…考古学だっけ)などなど、枚挙に暇がありません。これらのシリーズは伝奇なのに対して、蓮丈那智シリーズのあくまでも“ミステリ”。そうなると歴史の謎を解くことが、作中の謎解きにもかかわらずつながるわけで、本書ももちろんそういう構成です。
最初の「鬼封会」では、蓮丈那智の性格がエキセントリックすぎてなかなか感情移入できませんでした。
表題作「凶笑面」は民俗学+事件のつながりが分かりやすく、ようやく作品世界にドップリです。
「不帰屋」では森博嗣氏の『封印再度』を思わせるような物理トリックが炸裂。もっともミステリ色の強い一編です。この辺りから伝奇っぽくなってきて「双死神」では“税所コレクション”という大技が、「邪宗仏」にいたっては“日ユ同祖論”まで飛び出します。岡野怜子氏の『陰陽師』にも同じ話がでますね。

法月綸太郎氏の解説によれば、北森氏の『闇色のソプラノ』は先日読了した連城三紀彦氏の『暗色コメディ』に挑戦した作品とのこと。ぜひ読んでみたいです。どこかの棚で出会うのを待ちましょう(笑)。