読了本ストッカー:ジャパネスクホラーの最高傑作!……『百怪祭』

百怪祭―室町伝奇集
2006/6/18読了。


日本の怪奇作家の筆頭、朝松健氏によるジャパネスクホラー短編集です。室町時代山田風太郎も晩年描いていますし、なにか彼らを揺さぶるものがある時代なのでしょうね。この作品集でも「立川流」の影が見え隠れします。


「魔蟲傳」…これは何を書いてもネタバレしそう…。戦国時代にちょっと詳しい人であればすぐに気がつきます。第六魔天(もうすでにばれそうだ)よりの死者“未生不来”により不老不死(ただし条件付)にされたある戦国武将の運命を巡る物語です。“妙法青蓮華刹鬼経”は朝松氏の他作品にも出てきますね。
「水虎論」…ついに秘邪神・詛蜈守(ショゴス)登場!“水虎”という妖怪をめぐる問答が意味深でおもしろいです。水虎ってゲゲゲの鬼太郎にでてきたのとは…違うよね?
「小面曾我放下敵討」…立河坊目連、見連、文観上人など聞いた名前がぞくぞく。『異形コレクション13 俳優』に初出の作品ですので、タイトル通り芝居がポイント。しかしホントに朝松氏はすごい引出しを持ってますねぇ。
「豊国祭の鐘」・・・豊臣秀頼の中老・片桐且元が体験する異界とは?設定が見事です。
「かいちご」…土佐の大名・一条家を襲う立川流の呪を描きます。子供ネタはやめてほしい…。
「飛鏡の蠱」…足利義政日野富子浄土寺義尋の三人が高倉御所における月華の宴で、立川流の秘宝によって未来を垣間見てしまう物語。
俊寛抄 または世阿弥という名の獄」・・・これが一番怖いです。“芸”というものに潜む魔の恐ろしさをみっちりと書き出しています。朝松健すげぇ!


というわけで文句なしの五つ星でございまする。