私はこの「傘がない」のタイトルを、I've Got No Umbrella と訳したのですが、これも陽水さんに「それは違う」と言われました。「いいですか、傘は象徴なのです。『俺』の傘ではなく、人間、人類の「傘」なのです。傘は平和や優しさだったりする。だからタイトルはNo Umbrella でお願いします」Iだらけになった私の英訳には、余白がありません。Iを抜くことで、「傘」は平和になり優しさにもなれる。とすると、つめたい今日の雨とは、何なんだろう。期限は書かれていないけれど、「この雨が降っている最中」、つまり止む前に行かなくちゃ、とあるがなぜそうなのか一形がない、けれど途轍もなく大切な何かが一曲に織り込まれていたことがわかりました。
内容(「BOOK」データベースより)
日本語の先にある「日本」に迫る、厳選詞集対訳50作品。井上陽水、デビュー50周年。初めて評論で明かす、歌詞に込めた“目論見”。