読了本ストッカー:『怪談文芸ハンドブック 愉しく読む、書く、蒐める』東雅夫/メディアファクトリー

ここでひとつ注意すべきは、たとえ可憐で哀れな女の子の幽霊がな登場するような物語であっても、それが怪談として書かれ(語られ)るかぎり、そこには常に一抹の不気味さや不穏な気配が漂うものだということです。どんなに無害で愛らしくとも、幽明界を異にする存在である以上、この世ならぬものとの接触には、ある種の緊迫感……異界を受け入れてしまうことで、昨日までの安穏な現実が一挙に崩壊しかねない危険性が孕まれて当然だからです。その微妙な一線に無自覚であったり、あえてそこを踏み越えてしまった作品は、もはや怪談ではなく、ファンタジーやメルヘン、寓話、SFなどの隣接ジャンルに逸脱してしまうように思えます。

な、なるほど。もしかしたら「怪談」は拒絶の物語なのかもしれませんね。
明らかな異界の存在に対して、完全に受け入れてしまえばファンタジーとなるし、論理的に解明しようとすればSFになるし、どちらにしろ決定されてしまう。

ホラー・ジャパネスク読本 東雅夫/編 双葉社 双葉文庫
唐宋伝奇集 今村与志雄/編 岩波書店 岩波文庫
聊斎志異 柴田天馬/訳 角川書店 角川文庫
閲微草堂筆記 平凡社 平凡社ライブラリー
悪魔の霊酒 エルンスト・テオドール・アマデウス・ホフマン 筑摩書房 ちくま文庫
ロシア怪談集(「ヴィイニコライ・ゴーゴリ)」収録) 河出書房新社 河出文庫
世界恐怖小説全集#12屍衣の花嫁#世界怪奇実話集 平井呈一 東京創元社
恐怖の黄金時代#英国怪奇小説の巨匠たち 南條竹則 集英社 集英社新書
白魔 アーサー・マッケン 光文社 光文社古典新訳文庫
よもつひらさか往還 倉橋由美子
江戸怪談集 高田衛/編 岩波書店 岩波文庫
輪廻#RINKAI 明野照葉
月の子 石月正広