読了本ストッカー:『飛騨国「屈み岩」秘譚』南條範夫/講談社



2017/8/24読了。

文庫化されていないと思い、単行本を読んだのですが……『屈み岩伝奇』っての、もしかして文庫化かなあ?

著者の南條範夫氏を思わせる「私」が、飛騨国に残る「人体岩石化伝説」を追う物語です。

美しい姉妹の姫たちが、美童をめぐり葛藤した結果、「屈み岩」と呼ばれる岩となったという伝説。
日本には珍しく(って書いてあるんです)「人体が岩石化した」形をした岩(殺生石みたいに、まあ言われればそう見えるか?という感じではなく)には、四つの異説が伝わっています。

大きく二つに分けると、

A:姉=悪/妹=善
B:姉=善/妹=悪

その上、A・Bの両パターンに、それぞれ岩石化したのが姉/妹の説があるのです。つまり

A-1:姉=悪/妹=善/岩石化=姉
A-2:姉=悪/妹=善/岩石化=妹
B-1:姉=善/妹=悪/岩石化=姉
B-2:姉=善/妹=悪/岩石化=妹

4つのパターンそれぞれのストーリーを描くことで、どれが真実だったのかを考察する異色作です。
語り手の「私」が結構夢見がちで、実際に夢見ちゃうのですが、さすが『駿河城御前試合』の著者というラストでした。