読了本ストッカー:『私の大好きな探偵 仁木兄妹の事件簿』仁木悦子/ポプラ文庫ピュアフル


あの伝説のミステリ作家、仁木悦子氏の【仁木兄妹】シリーズの傑作選文庫第一弾です。
おそらく仁木氏の現役当時は、作品以外のことについてあれこれ取り沙汰されたと思いますので、こういった装丁で出た今こそ、仁木氏作品の真価が読めるのかな、などと考えました。

◆「みどりの香炉」……仁木雄太郎中学三年生、悦子中学二年生の時の、最初の事件。
父親の友人宅で、ヒスイの香炉が盗まれ、居合わせたふたりが推理します。いわゆる「消えた足跡」ですね!図もあって、ミステリ心をくすぐります!

◆「黄色い花」……仁木兄妹の隣家で起きた殺人事件。その解明には庭にある植物たちが……。植物学者たる雄太郎面目躍如の一編です。

◆「灰色の手袋」……兄雄太郎が間違って引き取ってきてしまったトッパー(トッパーってなに?想像もつかない……)を取り替えるべく、クリーニング屋を訪れた悦子は、死体を発見してしまいます。
故意、過失、様々な動機とトリックが重なり合って複雑な事件で読み応えがあります。

◆「赤い痕」……仁木兄妹は、子どものころ面倒をみてくれたばあやに招かれ、奥秩父へ。そこでまた殺人事件に遭遇します。

◆「ただ一つの物語」……母親となった悦子が主人公。兄雄太郎ではなく、夫が相棒(ってほど活躍しませんけれども)の短編です。
亡くなった友人が、悦子の娘のために作ってくれた自家製の絵本。新聞の通信欄でその本を捜している人がいることを知った悦子は、探し主と連絡を取るのですが……。

どれも面白い短編でした。残りのピュアフル文庫版3冊も手元にありますので順番に読んでみようと思います。

慎太郎刈り」とか「トッパー」とか註がいるんじゃない?と思っていたのですが、巻末にまとめて註がありました。
今の子どもたちに読ませるなら、出てきたところに註をいれるべきじゃないかなと思いました。