読了本ストッカー:「世界の辺境」と「昔の日本」はともに異文化世界……『世界の辺境とハードボイルド室町時代』高野秀行/清水克行/集英社インターナショナル


日本中世史の研究者、明治大学の清水克行教授と、日本が誇る辺境作家、高野秀行氏による対談集です。
この対談集が素晴らしいのは、両氏の立場が対等なところ。
中世史の専門家たる清水教授に高野氏が教わる、という形ではなく、「こんなとこが似てますよね?」「ここはどうなっているんですか?」など、ドンドン高野氏が質問したり、意見を述べたりしていきます。
とてもパワフルな一冊!

日本史はどうしても、「歴史的事実は変わらない」という印象がありますが、「綱吉の生類憐みの令はかぶき者対策」とか、最新の歴史解釈はどんどん変わってんだなあ!
【清水】
室町時代の人たちが食べていた雑炊は、江戸時代の人たちが食べていた雑炊よりも、コメの比率が高かったんじゃないかと思うんですよね。
江戸時代はコメ経済になったので、ちょっと変ないいかたになりますけど、コメは商品作物なんですよ。それ自体が売りものとして流通するので、あの時代の東北地方などの農民は、年貢としてコメを納めただけでなく、つくったコメを売って、そのお金で雑穀を買っていたんじゃないかと思います。
室町時代は銭で税を納めることができたけれど、江戸時代になってコメだけが税になると、モノカルチャーになる→不作の年は全部がだめ→飢饉
という構図など、なるほど!と思いました。

名産品は、自然発生的に生まれるのではなく、
【清水】 あと、悲惨な話なんですけど、東北で雑穀をつくらなくなったのは、大豆ラッシュが起きたからでもあるんです。江戸にしょうゆ文化が花開いて、その原料の大豆をつくれはつくるほど売れるというんで、東北ではみんな雑穀をやめて大豆をつくりだすんです。
(中略)
【高野】 なんだか、現代のグローバル経済みたいな話ですね。
【清水】 単作ってやっぱり危ないんですよね。自分たちが食べるものがなくなりますから。
【高野】 そういう話を聞くと、農業に対する見方がぜんぜん変わってきますね。
【清水】 室町時代にも、そういう傾向は始まっていたんじゃないかと思うんですね。あの時代は各地で特産物が生まれるんです。特産物があるということは、都市部で好まれる商品作物をつくっているということですから、そこに特化しすぎると、飢饉の原因になります。室町時代に飢饉が起きた原因の一つはそれじゃないかなと思っているんです。証拠がないんで、まだはっきりとしたことは言えないんですけど。
おお~なるほど!特産品って勝手にできるものじゃなく、流通があってこそなんだな!

高野氏からは「サッカーチームが呪術師を雇っている」「専属のコーチやトレーナーがいるように、専属の呪術師がいる」などの挿話が!
トロイメライ [コミック]』って本当だったんだ!サッカーチームに呪術師が帯同するって面白いこと考えたなあ~

「武田の騎馬隊は存在しない!」など、とにかく何度も読み直したい傑作でした!

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