読了本ストッカー:す、すがすがしいほどエスエフ……『重力の影』ジョン・クレイマー/ハヤカワ文庫SF


2016/5/25読了。

カバー裏のあらすじをそのまま引くと……

ワシントン大学で高温超伝導の研究に取り組むデイヴィッドは、実験中に不思議な現象を目撃した。回転場の内側に置かれた実験装置一式が、奇妙な音とともに、忽然と消え失せてしまったのだ! あとには、ガラスのようになめらかな木製の球が残されていたが、それは地球の植物ではなかった……現役の物理学者が、素粒子理論の最先端のひとつ“超ひも理論”と手に汗握るサスペンスを巧みに結合させた、興奮の本格ハードSF。

そのままです! これのみ! すがすがしいくらい……。

ただこの説明違う気がするんだよなあ……。
デイヴィッドの目の前で実験装置が消えたときは、木製の球は出てこず(出てきてたけど気づいてなかったはず)、木製の球がドーンと出てきたときは、デイヴィッドが代わりにいなくなってしまったので、目撃してないはずなんだけど……。

1980年代に訳されていますが、ネットワークの利用法など、作中にインターネットは出てこないけど、かなり先取りされた内容。すごいなー。
科学の新発見を隠匿せず、ネットワークを通じて政府を翻弄するさまは、科学者の良心を信じる科学者らしい筆致かと。
小松左京的といいますか。

ただ、小松左京なら絶対に描くであろう、新技術をめぐる暗闘や世界の変化は描かれません。日本の読者にはそこが物足りないです。