読了本ストッカー:『私が語りはじめた彼は』

私が語りはじめた彼は (新潮文庫)私が語りはじめた彼は (新潮文庫)
著者:三浦 しをん
販売元:新潮社
発売日:2007-07





2009/7/17読了。

大学教授・村川融をめぐる物語を、妻が、浮気相手の夫が、子どもたちが語る連作短編集。
川上弘美氏の『ニシノユキヒコの恋と冒険』を思い起こしますが(なんとなく)本書では、当の村川本人はほとんど登場しません。ミステリでもこういう手法というか趣向はありますね。

三浦しをん作品は、なんと言っても読みやすい! 現代小説すべてに言えるのですが、登場人物(多くは視点人物)の思考がトレース出来ない場合が多いのです。
は?なんでそこでセックスしちゃうの?とか、いやいやそこで去る必要はないでしょう、くっつけよ!とか……(笑)。
まあ読解力がないと言われればそれまでなんですが。三浦作品にはそういった感じがなく、スコ~ンと入ってくるのです。

最初は、誰が村川の行状を大学に密告したのかという謎を、助手の三崎を狂言回しとして探る『藪の中』みたいな話かと思いましたが、そんなミステリな方向にはいきませんでしたね。

本当に比喩とか上手ですよね。三浦氏の小説を読んだのは、意外と少なくまだ三作目ですが、こんなに芳醇な言葉を綴ることができるなんて……同い年とは思えん!BL臭も(ほとんど?)無いので、万人にオススメできる作品です。