写楽・考―蓮丈那智フィールドファイル〈3〉 (新潮文庫)
著者:北森 鴻
販売元:新潮社
発売日:2008-01-29
おすすめ度:
2009/4/15読了。
久しぶりの<蓮丈那智フィールドファイル>シリーズです。3作目。
◆「憑代忌」
……久々過ぎて、まったく話を忘れている……。沙江由美子って誰だっけ?っという具合に読み始めました。
火村家という旧家に伝わる<御守り様>という人形。調査を依頼された蓮丈那智(とその下僕たち)でしたが……。五行思想の相克関係をもって事件を推理しようとする三國が可笑しいです。
◆「湖底祀」
……ある村の湖の底から発見された神社の遺跡。本篇では<鳥居>の意味が中心の話題に。<鳥玄坊>シリーズでも出てましたよね、確か。なるほど~<塞の柱>→<鳥居>という仮説の間にアレを入れてくるとは!面白いなあ。
諏訪大社の<御柱祭>を、<怪我人が出るのは当たり前。ときには死人も出る>のではなく、<怪我人や死人を生み出すための祭>と読み変えるのが刺激的でした。民俗学では知られた話なんですかね?
◆「棄神祭」
……本篇では<保食神>、つまり自らを食べ物として差し出す神についての考察が中心。ラストも(予想はつくけど)衝撃的です。
◆「写楽・考」
……表題作。他の3篇とは異なり中篇とも言える分量です。お待ちかねの冬狐堂・宇佐見陶子も登場します。これは面白い!
保守的で知られる民俗学学会誌に『仮想民俗学序説』という異端的な論文を発表した式直男という人物は一体何者か?式家に伝わる<式家文書>を閲覧するべく、四国に向かった蓮丈研究室一行の前に、また事件が。
狐目の総務課主任のフルネームも明らかにされますし、那智も大学から査問委員会にかけられるはめに!いや、オモロ。
ラストがまた衝撃的!民俗学的部分と現代部分が乖離している(と記述師には感じられる)短編も多いですが、本篇では見事にリンク。この1篇だけで五つ星ですな!
表題作以外の3篇に共通するテーマは<贄>でしょうか?