読了本ストッカー:「耳をすまして」とティモシーはいった……『塵よりよみがえり』

塵よりよみがえり (河出文庫)


レイ・ブラッドベリ


河出文庫


2008/5/9読了。


 


考えろ。望め。望みをかなえる力があれば―そうなるんだ!


〈ひいが千回つくおばあちゃん〉が言います。



「一族なんだよ、みんな風変わりですばらしいんだ。夜に歩き、風に乗って空を飛び、嵐をさまよい、心を読み、魔法を働かせ、永遠か、そうでなければ千年を生きるんだ、どっちになるにしても」


〈ひいが千回つくおばあちゃん〉、〈女王猫〉アヌバ、〈夢を見ながら眠れる者〉セシー、〈歴史家〉ティモシー、〈霧と沼地の貴婦人〉、〈たった一匹の蜘蛛〉アラク、〈たった一匹のネズミ〉・・・みんな魅力的です。


一番好きなのは、コウモリの翼をもつアイナーおじさんかな。



「飛ぶのは楽しかったかい、ティモシー?」おじさんが叫んだ。彼はけっしてつぶやかない。なにもかもがけたはずれの爆発、オペラの朗唱なのだ。


映画『ファインディング・ニモ』のエイ先生みたい(「お~や、私のかわいい生徒たちはどこかな~?」by赤坂泰彦)です。


もともと短編なので、どの章も素敵ですが、体から魂だけ離れてるうちに、火事で体を失ってしまった4人の若者(若くないけど)たちが、四千歳の〈ナイルのおじいちゃん〉の体に入れられて旅をする、艶笑譚的ロードムーヴィ(?)「第十章 十月の西」( 「あんた!その年で!」 )、闇の一族が生きていける場所を求めてオリエント急行に乗り込んだ幽霊と老看護婦の出会いを描く「第十二章 オリエント急行は北へ」( 「わしが、これから、こわいお話をしてあげよう。本物の幽霊の話を!」「わーい、お話しして!」 )、洗濯物を乾かすために、ロープを引っ張って空を飛ぶ、悲しいアイナーおじさんの姿が読める「第十五章 アイナーおじさん」( 「けっきょくこうなるんだ。こうなる、こうなる、こうなる」 )が好きでした。


たたみかけるような、それでいて流麗な文章がとても素敵です。ブラッドベリは以前『10月はたそがれの国』で挫折したのですが・・・そうか、「集会」と「アイナーおじさん」はこっちにも載ってたのか。


それにしてもチャールズ・アダムズのカバーが素敵!ぜひ拡大して見てください。できれば買って見てください。