講談社文庫
2008/3/28読了。
その昔実家に単行本がありまして、替え玉説に沿ったストーリーらしいとは知っていたので、伝奇とも言えるかなと思って購入しました。
和宮に成り代わって、江戸城に入った少女が、大奥に新風を吹き込む、といった有吉版『後宮伝説』だと思って読み始めたのですが・・・全然違いました!
現代ものであれば、身代わりにされることに気づいた主人公が反抗してみたり、身代わり相手に同情してみたり、最終的には自らの意志で歩んでみたりするとこですが・・・そこは江戸時代。和宮の身代わりとして選ばれた少女、フキにはまったく知らされません。本当に何にも知らされません。それはもうひどい扱い。しかしそれが本書のキモなんですよね、きっと。有吉氏もフキへの鎮魂歌であるようなことを言われていたらしいですし。
母は藪内流の茶道をやっているのですが、藪内の家元である藪内竹綺(ちくい)が出てくるので(一瞬ですけど)本書を読んだようですね。
それにしても一番気になるのは、和宮に仕える少進の心のありよう。彼女は何に対して忠誠を尽くしたのか? 和宮になのか? 御所に対して? それとも「和宮」という名前に対してなのか? ただただ、自らに与えられた役目を果たしただけなのでしょうか。それもとても悲しいなぁ。