読了本ストッカー:日本版ドラキュラ伯爵、不知火検校現ル!……『髑髏検校』

髑髏検校 (徳間文庫)


横溝正史


徳間文庫


2008/1/15 読了。



記述師の伝奇小説道の導き手、三田主水さんのサイト『時代伝奇夢中道 主水血笑録』から知ったこの作品「入門者向け時代伝奇小説五十選」で紹介されています。出張で時間つぶしに入った古書店で発見。250円で例外的に購入しました。



「髑髏検校」



・・・外房の海で捕獲された鯨の体内から、長崎に留学中の鬼頭朱之助の手紙が見つかります。中には朱之助が筑紫の果ての島で出会った不知火検校のことが書き記してありました。検校に狙われているという家斉の娘 陽炎、その想い人にして房州鯨奉行勤番 秋月数馬、陽炎姫の腰元、かつ朱之助の許嫁 琴絵、朱之助の師匠にして本書のヴァン・ヘルシング、麻布狸穴の住人 鳥居蘭渓とその息子鳥居縫之助などなど・・・登場人物がガンガン入り乱れて大活躍です。「耳袋」の根岸備前守もこっそりでてきたりして、横溝正史恐るべし! これ、戦前に書かれた作品なんだなあ(呆然)。


主水氏の解説や巻末解説にも書かれているように、後半はかなり駆け足ですが、花葫(はなにんにく)をもってきたりするセンスが素敵です。日本で大蒜の数珠じゃあ、あんまりですもんね。検校の餌食となった娘たちの消息が気になりますが・・・面白かったです。


「神変稲妻車」



・・・本書の三分の二を占めるのが本編です。タイトルこっちにしても良かったのでは?という力作。
新宮伊勢守の家に伝わる伝家の秘宝<みすず><いすず>の名笛。話の主筋はこの2つの笛+1の争奪戦なのですが、それはもう出てくるわ出てくるわ、次から次へとキャラが登場し、敵味方入り乱れ、かつ笛の持ち主も入り乱れるので・・・もう訳がわかりません。
「髑髏検校」と同じく講談調の語り口がページを繰る手をとどめさせません。
ああ!もう笛揃ってるじゃん!そこで油断したら笛持ってかれちゃうよ~!あ~?!なぜにそんなあからさまな罠に~!読み終えるころにはぐったりです(笑)。


それにしても一番魅力的なのは悪漢、稲妻丹左でしょう。横溝氏も絶対一番好きだったと思います。本場(?)丹下左膳も読まないとなあ。巻末解説(細谷正充氏)に同じく日本ドラキュラ小説(?)として、「入門者向け時代伝奇小説五十選」にも言及のあった山田正紀氏の『天動説』が挙げられており、探書中。あと<ヤング・ヴァンヘルシング>シリーズも読みたいなぁ。