読了本ストッカー:「すみませんな、わたしもこのへんは不案内でして」と、モノリスは言った。……『前哨』

前哨


アーサー・C・クラーク  ハヤカワ文庫


2007/4/5読了。


クラークの初短編集です。短編集は案外読んでなくて、『白鹿亭綺譚』『天の向こう側』に続いて3冊目です。



「第二の夜明け」
・・・テレパシーの能力と形而上学が突出して発達した生物が迎える、新しい時代を描く異星版『幼年期の終り』。思わせぶりな書き方は相変わらず(というかこっちの方が先)。やっぱり好きだなぁ、クラーク。


「おお地球よ」
・・・大友克洋監修(もうしてないらしいですけど)の某カップヌードルCMか?と思わせる作品(笑)。少年の独白のみでセリフの一つもない作品ですが、胸に迫ります。


「破断の限界」
・・・事故によって残存酸素をほとんど失ってしまった地球金星間を航行する貨物船。乗員は2人。1人なら金星にたどり着ける・・・。怖っ!名作『2001年宇宙の旅』で、フランク・プールを救う手段がないとわかったときもゾッとしましたが、こっちも怖いです。傑作です。


「歴史のひとこま」
・・・異星の生物が、滅び去った人類について遺物から想像するというよくあるSFネタと思わせて・・・まあよくあるネタなんですけど、さすがクラーク。水を好む四足歩行の生物が惑星間航行宇宙船を作りうるかは別ですが。


「優越性」
・・・「戦闘分析器」に「百万本近い真空管が使われており、その維持と操作には五百人の技術者を必要とした」って・・・真空管はないだろ、真空管は。恒星間宇宙船に真空管!1951年発表だから仕方ないのか・・・。


「永劫のさすらい」
・・・100年後に目覚めるように設定した冷凍睡眠に入った〈支配者〉。しかし目覚めたときは?未来人はボゾンジャンプするようです(笑)。


「かくれんぼ」
・・・火星の衛星フォボスで行われる宇宙服一丁の男VS宇宙巡洋艦の「かくれんぼ」(笑)


「地球への遠征」
・・・ファーストコンタクトものといえるでしょうか。『幼年期の終り』のようなもの悲しさがあります。


「抜け穴」
・・・地球における原子力開発について、地球外生物の間で交わされる報告書を綴った短篇。ちょっとオチがわかりにくいんだけど


「遺伝」
・・・ロケット開発史を描く短編。「おお地球よ」に重なる物語です。ちょっと泣きそう(涙腺よわっ)。


「前哨」
・・・かっこいい~。短篇も素敵ですね。ラストの一文がしびれます!


面白かったです。やっぱりSFは良いですね。『クリプトノミコン』でも読もうかな?