自分の一冊に出逢ってほしい本には効き目なんかないんです。振り返ってみたら効き目があったということにすぎない。あのときあの本が、自分にとってはああいう意味があったとか、こういう意味があったとか、何十年も経ってから気がつくんですよ。だから、効き目があるから渡す、という発想はやめたほうがいいと思っています。読ませようと思っても、子どもは読みません。親が一生懸命本を読むと子どもは読まなかったり、お兄ちゃんが一生懸命読むと妹は読まなかったりね。本を読んでさえいればいいというものでもない。本ばっかり読んでいる子というのは、ある種のさびしさがあるからですよ。外で遊んでいると忙しいですからね。ですから、本を読むから考えが深くなる、なんていうことはあまり考えなくてもいいんじゃないでしょうか。本を読むと立派になるかというとそんなことはないですからね。読書というのは、どういう効果があるかということではないですから。それよりも、子どものときに、自分にとってやっぱりこれだという、とても大事な一冊にめぐり逢うことのほうが大切だと思いますね。どこか気に入った本を見つけて、その世界のなかにほんとうに入り込むくらいまで読んでみると、日本語しか見ていないのに、「この翻訳はおかしい」と指摘できるようになったりします。本は面白いものです。この本がちょっとでも自分の一冊に出逢うきっかけになればうれしいですが……。
↓読みたい本リストに追加↓