読了本ストッカー:『日本探偵小説全集#08久生十蘭集』久生十蘭/創元推理文庫


◆「湖畔」……ミステリというかサスペンスですね!ラブストーリーか?

◆「顎十郎捕物帳」
顎が長ーい、仙波阿古十郎。人呼んで顎十郎(面と向かって呼んだりしたら斬られちゃうから誰も呼ばないんだが)。
放り込まれた甲府勤番を辞め(辞めれんの?)、叔父が筆頭与力を勤める江戸北町奉行所の例繰方にぶち込まれると、快刀乱麻謎を解決し始めます。

・「捨公方」……まさか腐っても幕臣が、目安箱を盗む(しかも風呂敷に包んで!)とはね~。暗号ものにして伝奇的結末!
・「紙凧」……おぉ、これぞ大江戸ミステリ!11月だが、二三日冷え込んだ後、ぽかぽか陽気が続いた、なんて挿話も伏線だったとは!?
・「稲荷の使」……顎十郎の粋な解決法が素敵。
・「都鳥」……時代ミステリ名物三題噺!「馬の尻尾」「呉絽帯に織出した都鳥」「比丘尼の身投げ」ときて、まさかの結末!
・「遠島船」……伊豆七島へ囚人を送る遠島船から、囚人どころか役人、水夫も含め総勢23人が忽然と姿を消した!
・「鎌いたち」……江戸で歩いている人が突然喉笛をかっきられて殺される事件が!鎌いたちの仕業なのか……。
・「氷献上」……加賀藩から将軍家へ献上される氷が途中で盗まれる事件が!●字●分とか、ミニュートとか……幕末とはいえ自由すぎる……。
・「日高川」……蛇を殺した名主の娘の寝間に現れる蛇の幻影とは?
・「御代参の乗物」……代参に向かったお中﨟の腰元13人がいっぺんに神隠しに!
老中阿部伊勢守は月番の南町奉行・池田甲斐守だけではなく、北町奉行・永井播磨守にも事件の解決を命じます。
それは当然南町の同心藤波友衛と、北町の顎十郎の全面対決に!
・「三人目」……たくさんの男どもを手玉に取った清元千賀春が死に、すぐに犯人が自白しますが……。
・「丹頂の鶴」……将軍の愛鶴(?)「瑞陽」が御飼場で死んでいるのが発見されます。
将軍は事件の解決を、南町の藤波友衛と北町の顎十郎に命じ、吟味の御前試合(!)を開催します。むちゃくちゃやな……。
・「ねずみ」……南町奉行所・藤波同心の手下せんぶりの千太がコロリと判断した堺屋の死体。北町の顎十郎の手下ひょろりの松五郎は殺しと疑い、下手人を捕まえますが……。
・「野伏大名」……下総古河十二万五千石、土井大炊頭の家老からの依頼で、嫡子源次郎失踪の捜査をすることとなった顎十郎。
・「蕃拉布」……これはすごいトリック!「開化五人組」といわれる洋物屋の五人の商人たち。その月次の商談の場で、次々と突然絶息して死んでしまう怪異が!
・「咸臨丸受取」……ひょろりの松五郎が「江戸から盗賊たちがいなくなってしまった」と顎十郎に妙な相談を持ちかけます。ここ十日ほど、掏摸、ゆすり、空巣狙、万引、詐欺、何一つないとのこと。
「踊る人形」並の暗号ミステリ!
・「菊香水」……豊後五万二千石稲葉能登守の御留守居役から接待の呼び出しを受けた顎十郎ですが……。
・「初春狸合戦」……前作での失態により役を辞した顎十郎。
なんと……駕籠屋になります(笑)。
「アコ長」として浪人崩れの雷土々呂進(いかずちとどろしん)、人呼んで「とど助」とコンビを組みあぶれ続ける毎日!
ある日、長距離の客が声をかけてきますが、なんと彼は狸だと名乗るのです。
そして三百三十三匹の引っ越しのために、一匹一両で運んでほしいというのですが……。
・「猫眼の男」……相変わらず駕籠屋のアコ長。府中に行くというひょろ松を捕まえ、無理やり駕籠に乗せてしまいます。
・「永代経」……浅草柳橋、京屋吉兵衛宅から出火、吉兵衛の死体が発見されますが……。
・「かごやの客」……新規開店の居酒屋「かごや」。ご祝儀で只飲みしようとしたアコ長&とど助ですが、二人以外の客が皆殺しになるという緊急事態に!
・「両国の大鯨」……「遠島船」から続く物語がここで完結します!と言っても二作だけなんだけど。
・「金鳳釵」……深川木場の富豪、万和和助のお米が一度死んで生き返った。
末娘の利江は、生き返った姉は別人だけというのですが……。
・「小鰭の鮨」……大店の箱入り娘が次々と行方不明になる事件が発生!坂東三津五郎が出てきます。
・「蠑螈」……阿波屋ではなんと六人連続で病死が起こっています。アコ長こと顎十郎のところに相談にきた大工の清五郎は、すべては自分のせいで、ヤモリの呪いだというのですが……。

以上で全二十四話収録。
多様なトリックが読める見事な時代ミステリでした。
それにしても雷土々呂進の正体が、なにかいわくありげだったのに、スルーされてるなあ。

都筑道夫氏による公式続編『新 顎十郎捕物帳』も読まんとな。
今映像化するならアインシュタインの稲田さんがいるぞ!

◆「昆虫図」……ぐっ!こわ!

◆「平賀源内捕物帳」
ご存知江戸の名物男、平賀源内を主人公とするミステリ。
・「萩寺の女」……「雪の上の足跡」ですね!「鎌いたち」と同様かと思いきや、全く違うトリック。
す、すごいな~。
・「山王祭の大象」……江戸の大祭山王祭で、象の張りぼての中から女性の刺殺体が!という不可能犯罪。
・「長崎ものがたり」……こ、これはすごい!同日に江戸と大阪と長崎で、三人の男女が同じ人間に同じ方法で殺害された、という超不可能犯罪!

◆「ハムレット」……うーん、もはや現代ミステリといっても過言ではないよな。

◆「水草」……ホラー!

◆「骨仏」……こっちもホラー!