読了本ストッカー:『山の仕事、山の暮らし』高桑信一/ヤマケイ文庫


北関東から東北など、東日本の山岳地帯を巡って、山の人々の暮らしを取材した作品です。
「ひとと自然は対等ではない。共存しているのでもない。自然があって、はじめてひとは存在す。ひとは自然によって生かされているのである」
「街のハンターを混じえて山に入り、高性能の銃を肩に、ひとり一台のトランシーバーで情報を交換してシカを追うという近代猟法を続けていながら、獲物が去ることを恐れてサルをエテと呼び、山神の前を通れば自然に手を合わせ、ときには塩を供えたりもする。それはまさしく、日光のシカ撃ちに通じる伝承にほかならないのである」
「この辺のシカは、ほかのニホンジカと違って大型なんです。第二次世界大戦で日独伊三国同盟を結んだときに、ヒトラーが二頭のドイツのシカを献上しましてね。それを日光のの天皇の御猟場に放したんですが、そのとき一緒にエゾジカも入れたんです。ですから、今のニッコウジカは在来のシカとの三種交配みたいなもんです」
「女王蜂は発情すると、外で待ち受けている雄の群に向かって飛び込んでいくんです。一回の交尾で十匹前後の雄と交わりますが、雄はその瞬間に精嚢を引き裂かれて即死します。女王蜂が交尾するのは、あとにも先にもこれ一回きりです。あとは数年にわたって、体内に蓄えた精子から少しずつ受精して産卵を繰り返すんです」

知らないことばかり……。