読了本ストッカー:大御所たちの忠臣蔵異聞……『忠臣蔵コレクション2 異伝篇』縄田一男/河出文庫



2016/09/12読了。



今は無き新宿は昭友社にて、閉店セールで見つけました。

第一巻の『本伝篇』はなかったのですが、伝奇ならこちらで満足!

ご存知縄田一男氏編のアンソロジーです。



◆「元禄十三年/林不忘」……『丹下左膳』の林不忘氏による忠臣蔵異聞。浅野内匠頭の事件の前年、同じように勅使饗応役を務めることになった岡部美濃守と吉良上野介との争いを描きます。



◆「上野介の亡霊/早乙女貢」……吉良上野介生存版異聞です。



◆「薬草の栽培法/星新一」……ショート・ショートの雄、星新一氏の忠臣蔵異聞。途中まで、どう忠臣蔵に接続されるのかわかりませんでした。
縄田氏の巻末解説によると、時代小説作品集『殿さまの日(新潮文庫)』がまとめられているとのこと! そうなんだ、読んでみたいなあと思ったら……おんや? すでに探求書リストに登録されてました……。

◆「逆臣蔵/小松左京」……SF界の雄、小松左京氏による忠臣蔵異聞。
しかしそこは小松左京! ストレートなものなわけはなく、『仮名手本忠臣蔵』を題材に、当の敵役高師直が主役です。
遠い未来、『忠臣蔵』が成立し、その悪役として自らが描かれる、しかも塩治判官の妻に懸想し、それをはねつけられて逆恨みをした、とされていると聞いた師直。

「たしかにこの師直、塩治が妻に恋慕し、言いよってはおるわ。なれど、それがならぬが故に、塩治をおとしめてうばおうなどとは決して思わぬ。色は色、政治は政治。女色にからんで百年政治をただれさせた京堂上はいざしらず、この武蔵守は、武士だぞ。男だぞ。血をわけた親兄弟であろうとも、政道たたずとあらば討ちほろぼすが武家のならい、たとえ女がなびいたとて、塩治を討つべき理由があらば、容赦なく討ちほろぼす。女がなびかぬとて、塩治が政道おためとなる武将ならば、これを推すに何のためらう事やあらん。これができずして、執事、管領がつとまろうや」


◆「夕立と浪人/戸板康二」……中村雅楽シリーズで著名な戸板康二氏の作品。
趣を変えて(これまでも十分バラバラですが……)、『仮名手本忠臣蔵』を演じる江戸期の役者たちを描きます。巻末解説によると、
戸板康二には、江戸期の歌舞伎界に材を得て、役者たちの人と芸を、ミステリーの趣向で描いた連作『小説・江戸歌舞伎秘話』(講談社文庫)があり、本篇もその中の一篇である
とのこと。おぉ、これは探さなきゃ、と思ったら、またしても探求書リストに既に登録済みでした。しかも〈昭和ミステリ秘宝〉シリーズになってるし……。



◆「義士饅頭/村上元三」……こちらは世話もの版忠臣蔵異聞。



◆「勘平の死/岡本綺堂」……〈半七捕物帳〉シリーズの一編。

◆「柳沢殿の内意/南條範夫」……ディスカッション形式で、浅野内匠頭刃傷の原因を探る一編です。
徳川家の謎を描いた『三百年のベール』も傑作と書かれていたのですが……これまたすでに探求書リストに登録済みでした……。

縄田氏の巻末解説が相変わらず素晴らしく、読んでみたい本が、また増えました……。

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