読了本ストッカー:「失礼。おれのインターフェースはイデオロギー的に偏向してるんだ」……『シンギュラリティ・スカイ』チャールズ・ストロス/ハヤカワ文庫SF







2016/6/6読了。



「シンギュラリティ」といえば、ストロスかレナルズか?というわけで、チャールズ・ストロスのデビュー長編です。



お、思った以上に面白い!



21世紀に起きたシンギュラリティによって誕生したAI(?)エシャトンによって、人口の9割を強制的にディアスポラされちゃった人類……。

つまり恒星間宇宙にほっぽりだされ、連絡も途絶。



エシャトンは人類の心性によってディアスポラ先を振り分けており(ひま!)、「新共和国」は、中世ヨーロッパを志向する人たちが集わされたせいで、まあ中世ヨーロッパ風なテクノロジーが制限された星系となってます。



そこに来襲するのが「フェスティバル」。ディアスポラされた人類の一種ですが……とにかくムチャクチャに!

新共和国側は、フェスティバルの来襲直後に戦艦をタイムワープさせて奇襲しようと計画をたてる(ムチャクチャだなぁー)のですが……。



SFで超高度なナノテクを登場させちゃうと、基本的にはなんでもありになっちゃうので、なにを登場させるか作者のユーモア観の勝負になってくると思います。



本書では、革命主義がいい感じでスパイスになっていて、


昼までに、森は見分けがつかないほど変化していた。奇怪な生物学的実験が植生をゆがめていた。樹木と草の葉が入れ替わっており、足元では松の針葉が茂り、頭上ではひらたく細長い葉がそよいでいた。光沢のある黒を基調とする、黒と緑のまだらの葉だった。
(中略)「どうしてこんなことになったんだ?」(中略)「どうにもなってないじゃないの。ルイセンコ主義森林フリンジの組み換え芸術よ。(中略)この森はラマルク主義ね。ノードが表現型決定形質を交換して、有用な形質を獲得してるの」


と、よくわからんけど……面白い(笑)。



009ばりの加速機動が可能になる「戦闘インプラント」はありがちですけど、



“両手を頭の上に上げて革命的正義の前衛に運命をゆだねる準備をせよ!”

ブーリャはぎょっとした。

“そこから出てきて話ができるかい?”といおうと思ったのに、どうやら革命的インプラントには、ブーリャがいうことをすべて中央委員会のスローガンに翻訳してしまう記号論的参照転換機能を、有しているらしかった。(中略)“失礼。おれのインターフェースはイデオロギー的に偏向してるんだ”