読了本ストッカー:『阿部一族・雁・高瀬舟』森鴎外/旺文社文庫


2016/4/21読了。

◆「阿部一族」……熊本藩主細川忠利の死に際して行われた殉死をめぐる悲劇を描きます。読了感としては、五味康祐の短編みたいでしょうか(こっちが先だけど)。
阿部一族の長、阿部弥一右衛門は、忠利の死に際して殉死を願い出ますが、忠利本人に拒否されます。理由はなんとなく気に入らないから(笑)。
忠利の死後も生き長らえる弥一右衛門に対して、藩内のものは非難の目をむけます。腹が立った弥一右衛門はあっさりと死を選びます。それを機に、阿部一族は冷遇を受け……ついに血みどろの戦いが……。討手側にも藩内の政争(というほど大げさではなく、気に入らないって程度なのですが……)が関係していたり、なかなかドロドロです。これを読んでみたいと以前から思っていて、それの事前準備も兼ねて読んでみました。

◆「雁」……語り手が知らないはずの情報が入ってくるなあと思ってたら……けっこう視点問題が!恐るべし森鴎外

◆「高瀬舟」……京都から遠島される罪人を乗せる高瀬舟。弟を殺した罪で裁かれた喜助が、楽しそうにしていることを不審に思った、京都町奉行所の同心羽田庄兵衛は問いただしますが……。なんかやたら現代的なテーマな気が……。
満たされたことがないから、少額の金子を手にしただけで満たされる喜助と、常に金銭的な不安に襲われて(しかし心の奥には、こうして暮らしていて、ふいにとお役がごめんになったらどうしよう、大病にでもなったらどうしようという疑懼が潜んでいて)、満たされることのない庄兵衛。
う、なんか身につまされるぜー!