読了本ストッカー:『大盗禅師』司馬遼太郎/文春文庫


2015/5/20読了。

読んでも読んでも、お姫様が海から流れ着かないので、訝しい気持ちで読んでいたのですが……どうやら『韃靼疾風録』と勘違いしてたな……と途中で気づく(笑)。

読んでいて、読者としての自分の立ち位置がわからなくて不安になる作品です。
登場人物たちの関係性が(いい意味で)ふらついてるためです……。
主人公の浦安千八は浪人として登場するのですが、天下騒乱を起こそうとする「大濤禅師」(誤記に非ず)から豊臣家よりの僭称冠位を受け、禅師に心酔します。けどそののち由比正雪に出会えばそっちにふらふら。
ものすごく心酔しているのに、すぐに裏切る、優れた人物(と描写されていたけど)がそうでもなかった、などが頻出するので、読んでいる側の読書的価値観もふらふらしまくり!

そこがいいのかな……?
でもそうなると、誰にも感情移入できないので、カタルシスがいつまでたっても訪れないのです。