読了本ストッカー:『プーと私』石井桃子/河出書房新社


2014/8/28読了。

素敵な装丁の本ですね。本文の字色も緑で統一されています。本文の文字色をつけるの、あんまり好きじゃないんだけど……お洒落な感じはします。

児童書の翻訳家として、著名の石井桃子氏のエッセイ集の一冊。

アメリカの図書館では、図書館の人たちが、毎週何曜日とか日をきめて、おもしろい話を、本を読みにくる子どもたちに聞かせます。ロフティングは、たまたまそういう日に、図書館を参観にゆき、集っていた子どもたちに紹介されました。
その背の高い立派な紳士が、「ドリトル先生」の作者と知ると、子どもたちのあいだからは、たいへんな拍手がわきおこったということです。
部屋が静かになるとその人は話し始めました。
「イギリスで初夏なきだすカッコウは、ほかの鳥のすにたまごを生みおとし、自分はインドに飛んでいってしまいます。生みおとされたたまごは、よその烏のつばさにだかれてひなになり、つばさが十分つよくなると、はるばるインドまでとんでゆき、そこで、ほんとの親にめぐりあうのです。これは、ほんとうの話です。こういう事実は、烏の生活を見て、ふしぎなことをするなと思ったら、あくまでそれをしらべずにはおかなかった、強い探求心をもつ人たちによって証明されました。今は、ここに集ったみなさんのうちからも、人類のために、未知の世界をさぐり、大きな発見をする人が、きっと出てくると思います。」
子どもたちは、目をおさらのようにして、「餌をなげられた魚のように、その人の話にくいついた」と、図書館の人は書いていました。
それもそのはず――これは、あとになってわかったこととですが、――子どもたちは、自分たちのまえにたっている人こそは、ドリトル先生その人なのだと考えてしまったのでした。
しかし、私には、この時の子どもたちの考えは、それほどまちがってはいなかったような気がします。

という挿話に涙! どうした! 心が弱くなってるぞ!