読了本ストッカー『花を運ぶ妹』



2006/2/20読了。

バリ島で麻薬の不法所持で捕まってしまった画家の 兄・哲郎と、兄を救おうと奮闘する妹・カヲルが交 互に語る構成の長編です。
久々に「小説」ってやつ を読んだーッという気にさせてくれた作品。五つ星 です!
バリ島の濃密な空気感(行った事ないけど) がよく伝わってくる詩的な物語で、吉本ばなな氏に 通じるものがありました。哲郎がヘロインにはまっていく過程(変な理屈をこねながら)が非常にこわ い。

裁判が進む中でカヲルが「バリにはたくさん神 様がいて自分を信じよと迫ったりせず、信仰と御利益を交換せず」存在していると気づく場面は圧巻です。欧米の価値観を突きつけるのではなく、(消極 的な意味ではなく)相手を受け入れ流される、そう いう価値観もあるのだな~と感じさせてくれます。

世の「妹萌」作品なぞ屁でもありません。兄と妹が 同じ方向を向いて進んでいく「アンチ妹萌」作品の 傑作です。