読了本ストッカー『瑠璃の契り』

瑠璃の契り―旗師・冬狐堂 (文春文庫)瑠璃の契り―旗師・冬狐堂 (文春文庫)
著者:北森 鴻
販売元:文藝春秋
(2008-01-10)


2010/4/7読了。




◆「倣い雛形心中」……昭和を代表する人形作家北崎濤声の逸品を持ち込まれた、ご存知<冬孤堂>こと宇佐見陶子。しかしその作品は、何度も購入者のもとから返品されてきてしまう曰く付き。なぜ所有者たちはその人形を恐怖するのか?
『緋友禅』に収録の「奇縁円空」を読んでいれば何となく予想のつく展開ですが(作内でも触れているし)、陶子の目に異常が現れるという衝撃の展開があるので興味はそっちへ(笑)。
我蘭堂店主の越名集治やカメラマンの横尾硝子などレギュラーメンバーも多数出演(二人だけか)。

◆「苦い狐」……<苦い>のは陶子の青春の想い出。に、苦いぜ……。
美大時代の陶子に筆を折らせるきっかけを作った、圧倒的な才能の持ち主杉本深苗。在学中に火事で死んだ彼女の追悼画集の復刻版が陶子のもとに、そして同窓生のもとに送られてきます。送り主は誰か? そしてその目的は何なのか? いや、その動機はわからんて。説明されても考え込んでしまいます、きっと。

◆「瑠璃の契り」……福岡の飲み屋で、飲み代として瑠璃ガラスのきりこ椀を置いていった男。果たして?

◆「黒髪のクピド」

骨董、美術品を扱う作品であるだけに、引用したくなる金言が盛りだくさん。
値よりも箱書きよりも、己の眼を信じよ。美しいものを美しいと認める素直さと頑固さを捨ててはならない。
本書を読書中に、作者の北森鴻氏が亡くなられたことを知りました。とても残念です。