読了本ストッカー:“神”の存在をめぐって……『エリ・エリ』

エリ・エリ (ハルキ文庫)エリ・エリ (ハルキ文庫)
著者:平谷 美樹
販売元:角川春樹事務所
発売日:2005-05


 


 


2009/1/7読了。


時は21世紀中盤。科学の発達によって宗教が空洞化してきている世界。信仰の篤い宗教信者には自殺が増え、ヴァチカンをはじめとする世界宗教は衰退の一途をたどっています。
その反面、オートドライブの自動車や電脳書店(どんな書店なのか言及はありませんが……神保町にあるリアル店舗みたいです)、今よりもと進化した携帯やリニアモーターカー、HSTなど、現在と地続きのテクノロジーが盛りだくさんな世界。この距離感が抜群にリアル。21世紀中盤だとこんなもんかなあという技術の発達具合の描写がとても上手い。例えば、携帯は進化して今よりもっといろいろな機能がついているのだけど、日本人はそれでも<携帯>と呼ぶとか、そういうコネタが記述師的にはリアルさを引き立てて好感触。ま、好きずきですけれど。


一方木星では、外宇宙探査計画<ホロメス計画>がスタートしています。自らの信仰に疑問をいだいてしまった神父や、オールマイティな才能を持つ天才科学者、アプダクション経験を持つ精神科医などが木星へと集まり始めます。


主人公の一人である榊神父の苦悩に、若干シンパシーを感じる事が難しかったり(仏教徒ですし)、突然法王?とか唐突な印象はありますが、後半のファーストコンタクトに向けての盛り上がりはドキドキです。ツンデレ(?)な感じがまた(笑)。


Amazonなどのレビューを見ると、神とは?信仰とは?が堅苦しいテーマ、重いテーマと書かれていますが……どこが?よくある普遍的なテーマだと思いますけど。続編らしい(知らんかったけど)『レスレクティオ』『黄金の門』も乞う文庫化!今年初読了本にして五つ星です。いい年になりそうだ。