読了本ストッカー:前代未聞の昆虫ミステリ!……『昆虫探偵』


昆虫探偵


鳥飼否宇 光文社文庫


2007/3/6読了。


人間からゴキブリになった葉古小吉(ペリプラ小吉)が、熊ん蜂探偵事務所のシロコバκ(クマバチ♂)の助手として活躍(?)する世にも珍しい昆虫ミステリです。



  • 「蝶々殺蛾事件」・・・勉強になるなあ~(笑)。“チョウもガも同じ鱗支羽目(チョウ目)の昆虫であり、両者の間に分類学上決定的な差異はない”ってとこが特に(そこかい・・・)。L・ジュノbgn(ムクゲコノハ)殺蛾の罪に問われたササキアokm(オオムラサキ)の無罪を証明するべく奮闘するシロコバκですが。

  • 「哲学虫の密室」・・・C・オチュス9364(ダイコクコガネ♀)とC・オチュス4578(ダイコクコガネ♂。ロクデナシと読みます・・・なるほどね)の間にできた幼虫が、三重密室の中(地下の育児室の中で、母雌の監視のもと、糞球の中)からいなくなった事件を追うシロコバκ&ペリプラ小吉。母雌の9364が“糞虫の糞の存在意義は何か?”という哲学的命題について考える癖があるから“哲学虫の密室”・・・。

  • 「昼のセミ」・・・へ~。17年周期で大発生する周期ゼミと13年周期で大発生する周期ゼミがいるんだ・・・(微妙に説明口調)。初の外国虫、北米産のTIT46(ティティウスシロカブト♂)に教えられた、ジュウシチネンゼミがまったく鳴かなかった謎を探るべく、アメリカに渡ったシロコバκ&ペリプラ小吉&刑事のカンポノタス(クロオオアリ♀)。ジュウシチネンゼミの発生周期の理由が勉強になります。素数って・・・自然てすごいなあ。

  • 「吸血の池」・・・G・パル*(アメンボ♂)がフチトリ婦虫(フチトリゲンゴロウ♀)の死体(しかも体液のない)を池の中心で発見。タガメゲンゴロウ、ヤゴなど池の昆虫たちが入り乱れる中、お馴染みシロコバκ氏の捜査が始まります。

  • 「生けるアカハネの死」・・・本編が一番昆虫の生態と謎とが噛み合っているんじゃないでしょうか?「擬態が作用しなくなった」という、猛毒のベニボタルに“擬態”するシュードピロ2356(アカハネムシ♂)の訴えをうけて、“偽”探偵のペリプラ小吉が謎を探るというよく出来たお話。擬態に関する講義が非常に興味深い。擬態は擬態でも“毒を持つもの同士の体色が警告色に収斂するミュラー型擬態、毒を持たないものが警告信号を真似るベイツ型擬態に対し、捕食者が被食者を安心させ誘惑するためにしかける擬態をペッカム型擬態と呼ぶ。”なんて知ってました?(誰への問いかけ?)

  • ジョロウグモの拘」・・・ネフィラヴァルゴ(ジョロウグモ♀)の巣が連続して破壊される事件を、シロコバκ&ペリプラ小吉が追います。
    「ハチの悲劇」・・・へーっ!?“(ハチやアリの)雄は女王の未受精卵から生まれる。(中略)出生に関して雄親を必要としないのだ。つまり、雄は交尾をして雌の子孫を遺すことしか存在意義を持たない。生まれながらに自己の存在を否定している”って・・・知ってました?(だから誰への問いかけ?)

いやぁ~久々にミステリ堪能しました(勉強になったし)。