読了本ストッカー:“卓抜した文学としての推理小説”……『三位一体の神話㊤』

三位一体の神話(上)


 2006/6/28読了。
三浦しをん氏絶賛の大西巨人氏の作品。『神聖喜劇』が読みたかったのですが、古本屋でこちらを見つけたので、まずは慣らし運転ということで…。
寡作作家・尾瀬路迂が「卓抜した文学としての推理小説」である『三位一体の神話』を執筆する過程が描かれますが、インタビューの抄録やその注記が章を成すなど、“小説”を解体した構成です。批評的な感じは金井恵美子氏に近いでしょうか。しかし…被害者の尾瀬路迂(おせみちゆき)はいいとして、その娘は咲梨雅(えみりあ)、妻は白縫(しらぬい)、加害者は葦阿胡右(いくまひさあき)、葦阿の先妻は栓洲出萌那(ひさぎじまめばえ)、後妻は美杏花(みはる)…。ラノベ並のネーミングです(笑)。尾瀬の全集を作るあたりは、北村薫師(誤植にあらず)の「六の宮の姫君」を連想させます。作中に登場する尾瀬の五部作『聖茶番』は、大西氏の五部作『神聖喜劇』を思わせますが、小説における“モデル問題”に作者が小説内で言及していることで…なんかこんがらがってきましたが…まあ、作中の人物に作者自身を重ね合わせるのはよくあることですよね。下巻が楽しみです!