読了本ストッカー:『ザ・古武道12人の武神たち』

ザ・古武道―12人の武神たち (光文社文庫)
著者:菊地 秀行
販売元:光文社
発売日:1996-12


2009/6/24読了。


格闘小説の二大巨頭は、夢枕獏氏と菊地秀行氏であると勝手に思っているのですが、夢枕氏の武道エッセイ『本朝無双格闘家列伝』は読んだので、次は菊地氏の本書。記述師、菊地氏と同じく元少林寺拳法拳士でして、県大会最優秀賞にも輝いた猛者(笑)ですから。



◆「其の壱 荒木流拳法」



……不勉強な記述師は、てっきり荒木又右衛門関係の武術かと思っていたのですが、もちろんなんの関係もありませんでした。伊勢崎市の重要無形文化財なんですねぇ。


◆「其の弐 関口新心流柔術



……さすがの記述師も関口柔心ぐらいは聞いたことあります。『魔界転生』とかにもでてきたような。関節技の怖さ、凄味を菊地氏が感じる場面に共感。そう……関節技はすごいんですよ、まじて。


◆「其の参 西野流呼吸法」



……これは……正直キワモノでしょう。菊地氏も全然気持ちが入っていませんし(笑)。触れずに人が飛ぶという……。写真も宣伝用のものですね、きっと。


◆「其の四 鹿島新当流剣術」



……でた!鹿島新当流!記述師は鹿島新当流と香取神道流の違いがイマイチわからないんですが……。もちろん始祖は塚原ト伝ですが、さらにさかのぼると仁徳天皇の時代になるというのですから……恐るべし!すべての稽古を木刀でやるってのも怖いなぁ。


◆「其の五 白井流手裏剣術」



……宗家の白上一空軒氏は、港区で働くサラリーマン!すごい!現代を生きる古武術、素敵すぎます。根岸流もでてきます。『剣客商売』でお秀が投げていたのが、根岸流の<蹄>でしたね。


◆「其の六 林崎夢想流居合術



……塚原ト伝から<一の太刀>を相伝されたという林崎甚助によって興された居合術。「凄まじいものを見た」と菊地氏に言わしめた、すごい武術のようです。


◆「其の七 無比無敵流杖術



……盗賊から身を守るための自衛手段として民衆の間にまで広まった杖術。非常に実戦的で、横に振る動きがないというのがすごいですね。「無比無敵」なんて随分な名前だと思いましたが、「驕った意味ではなく、心を清くして、心に敵を描くな、すなわち無敵だということ」だそうな。なるほどねぇ。


◆「其の八 楊心流薙刀術



……柳河藩の御禁止流。一子相伝ではなく、あくまでも宗家は実力主義だそうです。十三代宗家小山宜子氏のご母堂、十二代宗家柳子氏のエピソードがすごい。



「母の教えた薙刀にはお茶がついておりました。これも実践なのです。(中略)武家点前と申しましてね。一例を挙げますと、袱紗で相手の口を押さえてしまうとか、お湯をつぐ柄杓がありますでしょ。あれの柄のほうで刺すとか、ですね。(中略)母が柄杓を投げると、柄が畳に刺さりました」


「ほかにもずいぶん、武道家としての心得を教わりました。よその家へ行ったら、畳の裾を絶対に踏んではいけない、とかですね」
「踏むと都合が悪いのでしょうか?(中略)一種の礼儀ではないのですか?」
「いえ。畳の裾、つまり畳と畳の間には刃を隠しておきやすいからというのです」


……。すごい!


◆「其の九 大東流合気柔術



……これはまたすごい歴史を持つ武術です。大東流合気柔術は、甲斐の武田家に伝わる大東流柔術と、江戸城内の殿中武芸として発達した<御式内>とが融合したものだそうです。大東流柔術の始祖は、源頼義の三男・源義光。この子孫が甲斐の武田の祖となったことで、武田家に秘伝として伝えられたわけです。その後、会津の武田家に継承。そこに登場するのが会津藩保科正之。彼は幕閣として勤務する中で、会津で身につけた大東流をもとに御式内を完成させます。そして登場するのが、有名な武田惣角。彼によって、二つの武術が改めて統合され、大東流合気柔術となったわけです。


◆「其の十 水鴎(メが品)流武術」



……おお!拝一刀!最近『魔界転生』見たんですけど、若山富三郎すごいな!若山版『子連れ狼』DVDになってんのかなぁ。


◆「其の十一 長尾流躰術」



……?


◆「其の十二 本部御殿手古武術



……でた!御殿手!ほんとにあるんだ!王家護衛のための武術のため、本部家の長男のみに相伝されるらしい。本部家の人間でも、長男以外は何一つ、技を知らされない(無かった)とのこと。すご!


◆「其の番外 柳生魔剣行」



……そして柳生の里へ。