読了本ストッカー:ジェルジュ・エスケルスふたたび……『雲雀』

雲雀 (文春文庫 さ 32-4)
雲雀 (文春文庫 さ 32-4)


佐藤亜紀
文春文庫
2008/10/19読了。


  ついにやって参りました!超弩級の傑作『天使』の続編。本書は連作短編集となっています。



◆「王国」



・・・オーストリア軍に所属し、前線で働くオットーとカールのメニッヒ兄弟は<感覚>の持ち主。これまでの人生では、同じ力の持ち主にあったのはほんの数人。しかし、ここにきてわんさか出会うことに(笑)。ケーラー少佐(出世したな)とジェルジュが登場します。二人のやり取りがかっこぇぇ・・・。


◆「花嫁」



・・・密輸を生業とするグレゴーリ・ロマヌィチ。『天使』では



「・・・匿って、傷の手当てをしてくれて、スタイニッツが来たら平気で玄関を開けて片付けちまった。その時がはじめてだよ、自分がどんな女を囲い者にしていたか気が付いたのは。いきなりどかんと来て、屋敷が吹っ飛んだと思うくらいだった」


のように、ちょっと語っていたエピソードが詳しく語られます。するとこのへなちょこが、のちのスタイニッツ男爵なんですなあ。女は強し!



  彼女がそんな不遜な顔をするのを、グレゴールは見たこともなかった。いや、見たという訳ではないが、何かひどく傲り高ぶったものが頭を擡げるのを感じた。何をする気だ、と訊いた。その時には彼女はもう、それまで伏せていた目を上げ、まっすぐスタイニッツに向けていた。


かっこぇぇ~!


◆「猟犬」



・・・カール一世をハンガリーの王位につけようと暗躍したフェルディナント大公の尻拭いをするはめになったジェルジュ。スタイニッツはもちろん、マレク、ディートリヒシュタイン、ヨヴァンなど懐かしい人物たちが再登場。


◆「雲雀」



・・・シリーズの掉尾を飾る表題作。オーストリア帝国は崩壊し、病気を患ったスタイニッツ男爵は引退します。いやぁ・・・オットー最高!(笑)


  前作『天使』も含めた二冊の魅力は、豊崎由美氏の『天使』の巻末解説、そして本書の若島正氏の解説にすべて書かれている気がします。なんかこのシリーズは岡野玲子氏にマンガ化してほしいと思うのは・・・記述師だけですか?