読了本ストッカー:つい買って読んでしまった・・・。……『隠し剣秋風抄』

隠し剣秋風抄


藤沢周平 文春文庫


2007/3/15読了。


つい買ってしまいました・・・。本の雑誌の杉江氏が、「深夜+1の浅沼さんに「恥ずかしいから今さら藤沢周平を読んでいるなんて大きい声で言わないように」と注意されている」と書かれていた『隠し剣秋風抄』を・・・しかも『蝉しぐれ』とセットで・・・だって105円だったんだよ~。「お?これはまさかキムタクの・・・」って思ったけど・・・。いや、でも面白かったです。
よく考えたら藤沢周平は初めて。NHKのドラマはよく見てたんですけど。



「酒乱剣石割り」・・・大酒飲みの藩士、弓削甚六は次席家老から政敵の成敗&それまで禁酒を命じられます(笑)。ま、酔拳というか・・・。


「汚名剣双燕」・・・不伝流の宗方道場で三羽烏の一人に数えられるほどの剣客、八田康之助はある事件でぬぐいきれない汚名を着てしまいます。ラストの剣戟の場面が素敵です。


「女難剣雷切り」・・・「醜男という評価はまず動かないところである」という出だしから、「気をつけろ、と惣六は自分をいましめた」というラストまで、クスリと笑える作品です。


「陽狂剣かげろう」・・・若殿に許嫁を奪われた佐橋半之丞は、気が触れたふりをするのですが・・・。



狂気を真似ることは、限りなく狂気に近づくことだった。二、三度半之丞は、少し先の方に、あそこを越えると狂うかも知れんと思うような場所を、ちらと垣間見たことがある。(中略)だがさっきはそうではなかった。一瞬のことだが、牆を越えて、ずるりと向こう側の世界に足をとられたような、気味の悪い感触が残っている。狂気をもてあそぶのは感心せぬと言った、十左エ門の言葉が思い出された。


という文章がぞっとさせます。


「偏屈剣蟇ノ舌」・・・人が右といったら左を向く、超偏屈男・馬飼庄蔵。その性格を上司の権力闘争に利用されてしまうのですが。肝心の剣戟の場面を描かないことで、逆にその凄さを際立たせる構成が見事です。


「好色剣流水」・・・好色の評判をとる三谷助十郎。本人はそんなことはないと思っているのですが、まぁ好色ですよね(笑)。本書初の根アカキャラ(?)。


「暗黒剣千鳥」・・・一番好きな作品です。“千鳥”という秘剣の描写が好み(笑)。“暗黒剣”っていうのもかっこいいし(←子ども)。


「孤立剣残月・・・昔は無明流の遣い手として聞こえた小鹿七兵衛も41才。腹も出てます。道場に通わなくなって長いし。そんな中、昔上意討ちした男の弟が藩政に返り咲き、七兵衛に復讐するという噂が。上司や同僚の家を回ってなんとか助けてくれるよう懇願する七兵衛ですが・・・。はたして秘剣“残月”を残された10日で身につけることができるか?これこそ映画化したら良かったんじゃないでしょうか?七兵衛役は西田敏行で!


「盲目剣谺返し」・・・ご存知『武士の一分』の原作短編。面白いです。映画も見ないとなぁ。


蝉しぐれ』は手に入れたのですが・・・あと『秘太刀馬の骨』『隠し剣弧影抄』はぜひ読みたいです。