読了本ストッカー:傑作!完全版!……『鉄塔武蔵野線』


2013/7/10読了。

新潮文庫として出ていた同タイトルの、増補完全版とでもいうべき本書。
新潮文庫版でも結構な「変さ加減」が醸し出されていましたが、完全版である本書たるや……(笑)。

小学五年生の少年・美晴は、鉄塔大好き少年。
夏のある日、偶然出会った「武蔵野線75ー1号鉄塔」を皮きりに、「1号鉄塔」まで遡れば「原子力発電所」にたどり着けるのでは?という思いで、武蔵野送電線を辿っていきます。
鉄塔の形状で「男性型鉄塔」「女性型鉄塔」と分けたり、「東電」を「ひがしでん」と読んだり、抱腹絶倒の面白さ。

しかし、語り口が大人の美晴が語る「私」人称であること、また美晴自身が鉄塔趣味は誰にも理解されないと思いこんでいることによる極度の自制が行動に働いていること、などから、むちゃくちゃファンタジックな物語となっています。さすが「ファンタジーノベル大賞」受賞作!

ネタバレになるので詳しくは話せませんが、主人公に届く手紙の部分部分、例えば「職員一同は勿論のこと、当発電所に行き交う電子の一個までが君の来訪を心待ちにしている」や「君との会談は、電気的信頼によって既に達成されたに等しいと、我々は楽観している」などに滂沱の涙……涙腺弱!