読了本ストッカー『紙魚家崩壊 九つの謎』




2010/12/22読了。

◆「溶けていく」……最初にこれをもってくるか?北村薫ダーク面を感じさせる短編。北村薫が書くからこそのコワイ話です。

◆「紙魚家崩壊」……これが、両手が恋をしている女と探偵との第三十七番目の事件。
「……つまり、密室殺人だということですか」<>「名探偵が現れ、密閉された部屋で人が死ねば、いやでもそういうことになるだろう」(中略)
「となれば、殺される者は何をもって応じなければならないのかね」
ごまかしてはいけません、偉大なる先達もいっている通り、我々はミステリの中に生きている人間(注2)なのです。となれば、答えは一つしかありません。
「常識的に考えれば、ダイイングメッセージだと思います」
「そう」
<常識的>?まるで山口雅也氏や森博嗣氏の書くメタミステリみたいでした。

◆「死と密室」……これが、両手が恋をしている女と探偵との第三十八番目の事件。

◆「白い朝」……恥ずかしいほどの○○ストーリー。ちらっと登場する、落語家になったらしい従弟って……あの人ですかねぇ?

◆「サイコロ、コロコロ」……<千春さん>シリーズ、でしょうか?園芸関係の出版社に勤める千春さんが出会った、赤い十面のサイコロを持つ男の正体とは?

◆「おにぎり、ぎりぎり」……またまた<千春さん>シリーズ。水町すみれ先輩と二人で、大学の先生のフィールドワークに参加した千春さん。<ザ・日常の謎>な短編。2編とも、悪意のない<わたし>シリーズといった印象です。

◆「蝶」……なんだか独白体の多い短編集ですね。

◆「俺の席」……おぉ~そういうオチか。出だしからではそういう話になるとは思わんかった……。でも確かに、長距離の通勤電車では<俺の席>ってありますよね。

◆「新釈おとぎばなし」……おとぎ話を本格ミステリ風にアレンジします。題材は『カチカチ山』。タヌキは文福茶釜芸能界デビューを志したが、夢半ばで破れた、という設定ですが、
「おじいさんを見送ったのが、おばあさんに化けたタヌキだった――ということはないのだろうね。犯行は、それ以前に行われていた――ということは」
ウサギは、首を振る。
「無理です。化けられるくらいなら、皆に見せています。タヌキは一時、芸能界進出を狙っていたようなのです。……変幻自在となれば、まず、それを利用して茶の間のスターになっていたでしょう。結局、彼に、特別の芸はなかったようです」
上手いなあ。そこで繋がるかと思いました。