読了本ストッカー:『剣難女難』

剣難女難 (吉川英治歴史時代文庫)剣難女難 (吉川英治歴史時代文庫)
著者:吉川 英治
講談社(1990-09-04)






2009/9/2読了。

『百冊の時代小説』で知った本書。
鳴門秘帖』はよく見かけるんですが、本書はなかなか見かけなかったので、吉祥寺の古本屋で例外的に200円でゲット。

吉川英治といえば『宮本武蔵』ですが……読んでないんです、実は。小学生くらいのとき、『新・水滸伝①~④』を読んだ覚えがあるんですが、それ以来とんとご無沙汰。全85巻(たぶん)にも及ぶ<吉川英治歴史時代文庫>の栄えある第一巻目です。

時は四代将軍家綱の治世。大藩宮津の京極丹後守と、小藩ながら、馬術の名人が多い福知山の松平忠房は、犬猿の仲。競べ馬で後れをとった京極丹後守は、剣術勝負で雌雄を決しようとします。
京極家の指南役大月玄蕃の相手として選ばれたのは、福知山城下に町道場を構える直真蔭流の剣客春日重蔵。重蔵は玄蕃を追い詰めるものの、策略により試合を止められ、京極家に急遽招かれた富田三剣のひとり・鐘巻自斎に足を砕かれてしまいます。
重蔵の弟春日新九郎は、兄の仇を討つべく、鐘巻自斎に只一刀撃ち込むことを誓い流浪の旅に出ます。

というわけで主人公は春日新九郎。この新九郎は、これまでまったく剣に触れたことのない臆病者。ガンダムエヴァンゲリオン以前にこんなダメダメキャラがいたとは……(笑)。天賦の才があるとは言うものの、全然修行をしない新九郎……実戦に身を置きますが、どんどん女難に巻き込まれ、目的を失っていきます。みっちり修行しろよ!とイライラします。
対称的に鐘巻自斎のかっこいいこと!そして最後は当然、伝奇小説のお約束、最強爺様の登場です。いや、面白い!悪は悪の裁きを受け、善はその善行が報われ、男女関係も主人公の都合の良いように収まるところに収まるという、さすが国民的作家です。

唯一気になるのは、武家奴山手組の頭領・深見重左衛門がのさばったままってことですな。ま、そんな伏線なんて、天下の国民的作家の前にはどうでもよいことなのか?
鳴門秘帖』『神州天馬侠』『神変麝香猫』あたり、集めてみましょうか。