読了本ストッカー:侵略!……『盗まれた街』

盗まれた街


ジャック・フィニイ  ハヤカワ文庫


2007/8/27読了。


本書へのオマージュとして、恩田陸氏が『月の裏側 (幻冬舎文庫)』を書いたということで有名ですね。侵略SFの古典です。


『月の裏側』は“乗っ取られた本人”の内面を綴ったのが大変面白かったのですが、本書では侵略される側の恐怖をストレートに描き、なんというか・・・逆にみずみずしい感じ(?)です。
1950年代の作品ということで、共産主義者への恐怖がこの作品を書かせたなどと言われますが、そんなことは置いといて楽しみました。


驚いた事に・・・記述師は本書のことを映画『光る眼』(巻末の解説によるとジョン・ウインダムの『呪われた村』が原作)と混同してることが発覚!子どもが出てこないなあと思ってたんだよね・・・(←バカ)。


スナッチャー』というMSXのゲームがあったなあ・・・と意味もなく子ども時代を振り返って見ました。



「ぼくに芝居をして見せるにはおよばない」私はぐいと身を乗り出すと、彼女の両眼を真直ぐに凝視しながら声を落とした。「ぼくはお前を知っているぞ。お前の正体を」
それでも一秒ほどのあいだ、彼女は、何が何やら判らないという様子で、○○と私とに、交る交る、情けない視線を投げて立っていた――そして突然、仮面を脱ぎ棄てたのだった。(中略)その彼女の私を見つめる顔が、みるみる木像のようにこわばり、表情がはげ落ちたかと見るまに――それは冷酷無惨な異形のものに変貌したのである。いま、その視線の中には、私の記憶に親しいものはまったく失われてしまっていた。海の魚の目ですら、私にむかって据えられたそのものの凝視よりはるかに親近感を感じさせたにちがいない。それから――それは口を開いた。「お前の正体を知っているぞ」と私がいった、いまやそれが答えたのだ。無限に遠い、抑揚のない声が。「知っていたの?」
そして、くびすを返すと、歩み去った。


こっこっこっ・・・怖い(泣)。