読了本ストッカー:「イエ」に対する妄執が怖い……『書庫を建てる 1万冊の本を収める狭小住宅プロジェクト』松原隆一郎/堀部安嗣/新潮社


2014/11/7読了。

書庫を建てることは叶いませんでしたが、本棚は家に据え付けることができたので、ほぼ満足の記述師ですが、「本の雑誌」で本書を知り、読んでみました。

読みはじめて驚いたのは、本書が単純な「こんな家(書庫)作っちゃいました~」という性格の本ではないということ。
施主であり著者である松原隆一郎氏の祖父の生涯から語られます。
松原氏の故郷に対する、物体としての「家」に対する、また精神的な「イエ」に対する思いが切々と綴られています。

数年前の家を建てる前の私であれば、非常に共感できたと思います。「実家を離れ、もはや戻ることもないであろう長男」という共通する立場も同じですし。
しかし、その先祖の思い出を受け継ごうとしない父親に対する侮蔑の言葉、仏壇を「小さいのに買い替えたら?」と言った妻に対する「カッとなった」部分などは、完全に引いてしまいました。そこまでするほどのものではないよな、と。
思い出の中の家はなにも壊しませんが、現実の「家」や「イエ」は、家族をも壊しますからね。
親とか家よりも、家族が大事だよな、正直。と思いますので。

でも後半の建築家の堀部氏との、双方向描写になってからは、完全に読み物として楽しめました!
悩みながら、あ!と解決策に気づく場面なんてスリリングです。
ほんと、現場の職人さんの力は偉大だなぁ!