読了本ストッカー:幅広いSF観のかたに!……『書き下ろし日本SFコレクション#NOVA#01』


2014/3/19読了。

なかなか100円じゃ見つかんない〈NOVA〉シリーズの1巻目です。
大森望氏編集によるアンソロジーは続々と発売されてましたが、このシリーズは書き下ろしのSF短編集です。大森氏のSF観が現れており、かなり幅広い選択ですよね。

◆「社員たち:北野勇作
……大森氏による要約「得意先から帰ってきたら、会社が地中深くに沈んでいた」これがすべて!
「往年の筒井康隆椎名誠超常小説群の愛読者なら、きっと北野ワールドの魅力にとりつかれるはずだ」とありますが……苦手なんですよね。
大森氏がよく書く「SF用語を使わずにSFを書く」ってやつは本当にすごいなと思っていて(記述師の読書歴では、最良の作品は小林泰三氏の『海を見る人』かな)、常々読みたいと思っているのだけど……やっぱり苦手かな?

◆「忘却の侵略:小林泰三
……これですよ、これ! さすが小林泰三。「もし、記憶に残らない存在があるのなら、その存在の波動関数は収束しない」というネタ(?)から、怒涛の侵略SFが!

◆「エンゼルフレンチ藤田雅矢
……SFというか、ラブストーリー? 人間の人格を人工衛星転写する技術とか、過去に通信を送る理屈とか、その辺のガジェットはさらっと流しちゃうので、物足りない感じもしますが。

◆「七歩跳んだ男:山本弘
……まさに「と学会」的SFミステリ! 月面基地で、宇宙服を着ずにエアロックから出て、七歩歩いて死んだ(当たり前)男……。果たして自殺か、他殺か、それとも?
なんか途中で「まさかこれが真相か?」となんとなく喝破したつもりになっていたのですが、やっぱりそうじゃなかった~。

◆「ガラスの地球を救え!:田中啓文
……アホすぎる……。アニメやマンガのリゾートセンター(本当にヤマトを作ったりする)に国家予算を湯水のごとくつぎ込むことによって日本を滅亡に導いた大統領「ロウ・アゾータ」って!(笑)

◆「隣人:田中哲弥
……あ、これ苦手……。

◆「ゴルコンダ:斉藤直子
……評判の高いファンタジー大賞優秀賞受賞作『仮想の騎士』の著者ですね。文庫化されないから読んでないんだよなぁ……。

◆「黎明コンビニ血祭り実話SP:牧野修
……これが一番SFって気がする! ここから三作は「テキストSF」って感じ! 記述師としてはこういうの好きなんですよねぇ~。
「戦え! 対既知外生命体殲滅部隊ジューシーフルーツ!!」ってことで、肉汁でジューシーです……うげぇ……!

◆「Beaver Weaver:円城塔
……『年刊日本SF傑作選#虚構機関』所収の「パリンプセストあるいは重ね書きされた八つの物語」に次ぐ円城塔作品です。
円城塔氏の作品は、いつも「何じゃこりゃ、さっぱりわからん」というスタート。そのうちなんとなく作品世界のルールが見えてくるのですが……普通の作家の作品なら、ルールが見えてくるにつれて「あぁ! さっきの描写はこういうことだったのか!」ってわかってくるものです。
しかし円城作品ではそれでも割り切れないことが多い! っていうか全くわからないまま作品が終わってしまうんですよねぇ……。

◆「自生の夢:飛浩隆
……これもテキストSFですが……導入は好きな感じだったんですが、なんとなく尻すぼみに。

◆「屍者の帝国伊藤計劃
……後に円城塔氏との共著という形で完成した、伊藤計劃氏の絶筆短編。
「ドラキュラ」+「フランケンシュタイン」+「シャーロック・ホームズ」な感じでスチーム・パンクというか霊素(スペクター)・パンク?