読了本ストッカー:奇術とミステリはあべこべの関係にある……『ミステリーでも奇術でも』


2014/2/12読了。

泡坂妻夫氏のエッセイ集です。氏のエッセイってどこかにまとまってるのかなあ?

紋章上絵師、奇術師、ミステリ作家の三つの顔を持つ泡坂氏にあわせて「すぎれば過去はおかしくて」「いつでも奇術はおもしろく」「とかくミステリーはむずかしい」の三部で構成されています。

それにしても、マジシャンとしてののめり込み方がハンパじゃないのが改めて驚きです!
よくマジシャンとミステリ作家は人を騙すことが共通点として挙げられると思いますし、実際泡坂氏をそういう視点から評したものも多いですが、氏はそんな単純には捉えていません。

パズル、探偵小説、SF、奇術。
何となく連関のあるような、よく考えると全く別のことを目的としているとしか思えないような分野。
パズルには必ず正解がある。(中略)パズラー(純謎解き推理小説)では読者が真犯人を指摘するためのデータが、全て書き込まれていなければならない。
奇術はあべこべの立場にある。
奇術の正体は誰にも解き明かされてはならない。
奇術の目的はいかに相手をだましおおせるかだ。そのためには手段を選ばない。


あと昭和61年の文章に、メンタリズムが出てきて驚きます。

奇術の中に「メンタリズム」という分野があって、奇術の盛んなアメリカには、この専門家もいるほどだ。(中略)メンタリズムはまだ一般的に広まっていないが、現在、かなり進歩していて、その術を見せられると、これは本物の予言者かと、びっくり仰天するはずだ。

しかも『11枚のとらんぷ』で11のメンタリズムを扱っているとのこと! あれメンタリズムの小説だったんか!?
読み直してみないとなぁ……。