読了本ストッカー:和製クトゥルー神話の傑作アンソロジー!……『秘神界#歴史編』


2013/12/24読了。

一週間の出張にでることになり、一冊で一週間保つ最強の本を求めて、これにしました。まったく読み終わりませんでしたけど……。

ラヴクラフト御大の作品を読んでいないのにわき道にそれてもいいのか?という疑問はありますけどね……。
本書『歴史編』は、「伝奇性を追究した」と編者前書きにあるように、クトゥルー神話と歴史の一点をつなぐ作品の集成です。

◆「おどり喰い/山田正紀
……『火垂るの墓』の舞台でもある神戸大空襲の背後に蠢くものとは? これだけだとよくある(?)設定ですが、さらにひとひねり。

◆「五月二十七日/神野オキナ
……今度は沖縄上陸戦が舞台。米軍、日本軍とも別のものと戦う羽目に……。

◆「恐怖率/小中千昭
……これはちょっと伝奇的歴史の一点が特定できませんでした。怖いけどね……。さすがウルトラマンクトゥルーを接続した男、小中千昭

◆「逆しまの王国/松尾未来」
……山梨県は西湖周辺を襲った山津波、これは史実のようですね。

◆「苦思楽西遊傳/立原透耶」
……おぉ、すげぇ! クトゥルーin西遊記! そういえば沙悟浄ったらねぇ……そうだよなぁ……今まで書いた人いなかったのかなぁ?
孫悟空を火果山に閉じ込めたのがアイツで、三蔵とともに向かうのは、天竺=無名都市! すげぇ……傑作だと思います。

◆「邪宗門伝来秘史(序)/田中啓文
……タイトル通りですよ……(笑)。
山田風太郎伝奇によれば、ザビエルは梅毒を持ってきました( 「スピロヘータ氏来朝記(『売色使徒行伝』所収)」 )が、邪神も持ってきてました!
プチジャン神父が発見した隠れキリシタンの教義ねじくれ事件(?)が引用されていますが、こちらは同じく『売色使徒行伝』収録の「姫君何処におらすか」の題材ですね。

◆「五瓶劇場#戯場国邪神封陣/芦辺拓
…… これは超傑作!
読んだことあるよなあと思ってたのですが、『伝奇城』に収録されていた「五瓶劇場 けいせい伝奇城/芦辺拓」 と混同してたみたい……。
水戸藩による『大日本史』編纂の途中で、魔道書に手を出した者がいたらしく、芝居小屋など物語世界に不可思議なことが……。
いつも思うのですが、芦辺拓氏の伝奇は、「この人物がのちの○○でした」の○○が、日本史教科書レベルではない(平賀源内とかじゃない)とこがいいですよね~。

◆「蛇蜜/松殿理央」
……タイトルでもわかるように、蛇神イグの登場です。なんだかネトネトでトロトロの一編。

◆「夜の聲 夜の旅/井上雅彦
……井上雅彦氏の小説は初めてかも? 名アンソロジストとして高名な氏ですが、小説もとても気に入りました。「花花公仔(プレイボーイ)」「 拿破倫(ナポレオン)」などの多用されるルビ言葉に酔っていると、そんなところに連れてかれるとは! いや、素敵な短編でした。

◆「明治南島伝奇/紀田順一郎
……某小説家が出てきます。記述師はほんとこの手の常識(?)がないので、最後まで誰かなぁ?と思ってました……。

◆「聖ジェームズ病院/朝松健」
……小説の掉尾を飾るのは、朝松健氏の短編です。スタートは何の話かなと思ってましたが、誰でもすぐに元ネタは割れるはず。謎の日本人用心棒タローの正体はわかりませんでしたが……。しかし、あいつも邪神の手下だったのね……。

後半は資料編。
◆「ラヴクラフトの居る風景/米沢嘉博
◆「映画におけるクトゥルー神話鷲巣義明
◆「ゲームにおけるクトゥルフ安田均
◆「日本作家によるラヴクラフトCTHULHU神話関連作品リスト/久留賢治」
◆「クトゥルー神話コミックリスト/星野智」
◆「ラヴクラフト作品/クトゥルー神話映画リスト/青木淳