読了本ストッカー『神州纐纈城』


2013/10/22読了。

柳生武芸帳』を読んだときも思ったのですが、伝奇小説の未完って、未完らしさがないっていうか……未完バッチコイ!って感じです。

半村了の巻末エッセイが素晴らしい!!
文学や芸術をめざしたら、伝奇など書けはしないのだ。
(中略)
そうやって書いている現場の声としてひとこと言えば、伝奇小説とはうまくおわらない小説であるようだ。
ストーリーの中核に自己増殖性がある。たとえば、人跡未踏の秘境にこれこれの性質を持った一族がいてその末裔が……となれば、登場人物の血筋はどんどん入り組んで行かざるを得ない。私は自己増殖しないようなネタは面白い伝奇小説にはならないと思っている。(中略)だから伝奇小説の面白さのひとつは、ストーリーが次々にふくれあがっていく面白さでもある。書きつづければ実際の社会と同じ広さにだってなりかねない。伝奇小説が長いのも、登場人物が無闇に多いのも、そのせいであろう。
したがって『蔦葛』や『纐纈城』が未完の形で残っていることを、私はさして残念に思わない。もし作者が未完であることを残念に思って逝かれたとしたら、そのことのほうを私は残念に思う。
国枝さんは遂に終ることができぬほど面白い伝奇小説をお書きになったのである。