読了本ストッカー:宇宙を統べる理論は証明されるのか?……『万物理論』


2013/8/2読了。

むむむ……すごいよ、イーガン。正直なにがどうなっているのかぜんぜんわからぬわ!
裏表紙の解説がまったく内容を語っていないっていうのもすごいな……。

内容解説の時点まで話が進むのは第2部になってからで、第1部は、主人公アンドルー・ワースの仕事風景(ジャーナリストです)を描くことで、舞台となる2055年の技術的背景を過不足なく(いや、異様に“過”な感じですが!)提出してます。あぁ、そういや『宇宙消失』の出足こんなんだったなぁ、と高まる期待!

主人公のアンドルー・ワースは、巨大なネット放送局〈シーネット〉のジャーナリスト。視神経に直結した〈目撃者〉というソフト(?)で見たままを記録し、自宅で番組を編集し納品するという、カメラマン+ディレクター+技術者的な存在です。バイオテクノロジー専門でやってきたアンドルーですが、行き過ぎたテクノロジーを取材しすぎて、精神的に追いつめられたため、緊急避難的に、物理学の番組作りに参加することになります。時はまさに物理学の正念場。かの「万物理論」がいま証明されるかも……ということで、物理学の番組に逃げたのに、こんどは全宇宙的に追いつめられると(笑)。

「きみは、しつこく自己言及をしている――しかもそれがたいていは嘘であるような――世界に住んでいて、うんざりしたことはないか? 価値のあるものはすべて――寛容さも、高潔さも、誠実さも、公正さも――“オーストラリア人独特のもの”だと定義するような世界に? 多様性を奨励するふりをして――なのに“自国民のアイデンティティ”についてのたわごとをいうのを、どうしてもやめられない社会に? 権威者としてのきみの代わりに意見を述べていると称する道化の果てしない列に、嫌気がさしたことはないかー政治家、知識人、芸能人、それに、“オーストラリア人特有ですユーモアのセンス”にはじまって、冗談にもならない“集合的潜在意識の図像学”にいたるまで、きみをあらゆる点にわたって定義づけ、特徴づける時事解説者――こういう、要するに、嘘つきと泥棒ばかりの連中に?」
これって日本に置き換え可能ですよね?