読了本ストッカー:音楽青春小説の傑作!……『船に乗れ!#01』



2012/10/26読了。

傑作(と、もう書いちゃいます!)音楽青春小説三部作『船に乗れ!』スタートです。

音楽一家に生まれ、自身もチェリストを目指す主人公が、一流音楽高校受験に失敗し、中流音楽高校(一族の経営する)に入学、超絶テクを見せつけて頭角を現すという「鶏口となるとも牛後となるなかれ」を地でゆく小説です……。

もうプライドたちがむんむんで、読んでて辛い~。けど面白い!

(オルガン教師である祖父に譜面通りに弾けといわれて)当然のことながら、そうやってセンチメンタルな感情論をまじえず、ひたすら楽譜に忠実に弾けた演奏は、自分でもはっきりと出来が良かった。それは音楽が「判る」瞬間だった。目の前に並んでいるヘンデルハイドンの単調で無表情な楽譜が、なぜそのように書かれているか、それ以上のことが書かれていないか、指と耳で呑みこめる体験だった。
しかしそれは同時に、おじいさまという存在をさらに恐ろしくさせる体験でもあった。僕は理由もなく大人から怒られたことは幸いにしてないが、厳然たる理由が遠くにそびえ立っていると判っていて怒られるのは、また格別なものがある。恐怖ではない。畏怖というやつだ。さらにその理由というのが、おじいさまの機嫌のよしあしとも、僕のしつけとも関係のない、「音楽」という、これ以上ないほど抽象度の高い芸術の追究のためであるのが、さらに畏怖の念を増幅するのだった。


このように、音楽小説としても秀逸です。