読了本ストッカー:さすが佐藤賢一伝奇!……『カルチェ・ラタン』



2012/4/17読了。

おぉ、序盤からビリビリきます、伝奇魂!

「序 日本語版の刊行に寄せて」という序文があり、本書は、ドニ・クルバンという16世紀パリに生きた人物が遺した覚書『ドニ・クルパン回想録』(フランスで刊行された折りには『カルチェ・ラタン』と題された)という古文書であること、日本の歴史作家「ムッシュー・サトウ」の求めに応じて日本語版を刊行したものが本書であること、などがドニ・クルパンの子孫であるヴェクサン侯爵、ドニ・九世・ドゥ・クルパンによって書かれています。
さらに初版の表紙画像まで用意されている。こういうのスキ(笑)。

舞台は1536年パリ。
パリを代表する海運業者の次男坊に産まれたおかげで、若いながらも夜警隊隊長になってしまったドニ・クルパン22歳、童貞。
すぐ泣くし(警官なのに?)とても「序」にあったように、「行動の人としても偉大な足跡を記した傑物」「晩年は無双の剣客として名を馳せ」「我が栄光の一門の家祖となったことで「大ドニ」と通称される、真実の英雄」とは思えないダメダメぶり……。

物語は、ドニが警察で起きた事件を以前の家庭教師であったパリ大学の天才マギステル・ミシェルに相談するスタイル。お? これミステリなの? 裏表紙とか目を通さずに読んでるので、そんな驚きが(笑)。
マギステル・ミシェルは、パリ版ホームズです。「初歩的なことだよ、クルパン君」とか(笑)。

物語はだんだん神学的様相を現し、フランシスコ・ザビエル、イニゴ(イグナシオ)・デ・ロヨラジャン・カルヴァンなど総出演。ラストもなんだか感動します……。
〆は、「作家 佐藤賢一」による「解説 ドニ・クルパンと、その時代」。
さらなる吉野仁氏による文庫解説は蛇足じゃないかなあ……。ともあれ面白い伝奇でした!