読了本ストッカー『宇宙旅行はエレベーターで』


2012/3/16読了。

なんだか構成の問題か、同じ話が何度も出てくる……。
宇宙旅行のしかた』みたいな本で、こういうのがよかった。

宇宙エレベーターのケーブルの全長は10万キロメートル。長っ!月までの距離の4分の1。
「ニンビーNIMBY症候群」=Not in my back yard(自分の裏庭にはあってほしくない)

アース・ポート(宇宙エレベーター発着基地)候補地
・ハワイ南方の赤道上→ロサンゼルス経由ホノルルからアクセス「赤道太平洋アース・ポート」
南米大陸沖の南太平洋上
南米大陸沖の中部大西洋上
・オーストラリア沖のインド洋上→パースを拠点

テスト
最大250キロメートルのケーブルを国際宇宙ステーションから繰り出して行う。これ以上の長さのケーブルは、末端が時速2万2000キロメートルで移動しているため燃え尽きてしまうので、できない。
その後3万5000キロメートルの静止軌道からテスト。
実際のケーブル敷設には、10万キロメートルのケーブルを巻いたケーブルドラムを低軌道→静止軌道の順に運びあげる。
上下同時にケーブルを繰り出す。ケーブルの下端が大気圏に到達したら、アース・ポートまで引っ張ってきて固定する。

カーボンナノチューブ製のケーブルは、この段階で、わずか20センチメートル。厚みは髪の毛よりも薄い。
補強用のケーブル敷設装置を主ケーブルづたいに上昇させ、約200本のケーブルで補強を行う。ケーブル全体の幅は、約90センチメートルになる。
200基のケーブル敷設装置はすべてケーブルの末端につなぎ止められ、カウンターウェイトとして作用する。
その後、ケーブルの静止軌道上に宇宙ステーションを設置する。
さらにケーブルの先端部にも宇宙ステーションを設置する。

ロシア、サンクト・ペテルブルクの数学教師、コンスタンチン・ツィオルコフスキーが、1895年に「地球と宇宙に関する幻想」というエッセイを書き、宇宙エレベーター構想の原型イメージを提示した。ツィオルコフスキーは「静止軌道」という概念を発見。
その後、1960年にレーニングラード(サンクト・ペテルブルク)の技術者ユーリ・アルツターノフが宇宙エレベーターの構造に関する論考を発表。
その後1966年、アメリカのスクリップス海洋研究所のアイザックス、ヴァイン、ブラッドナー、バッカスによって、別個に発明されている。
1975年、アメリカ、ライト・パターソン空軍基地のジェローム・ピアソンが「軌道塔」に関する論文を発表。
1979年、ジェローム・ピアソンの情報提供から、アーサー・C・クラークが『楽園の泉』を発表。
1979年、クラークは西ドイツのミュンヘンで開かれた第30回国際宇宙会議で宇宙エレベーターの実用性に関する講演を行う→最初の公的な発表。

1990年代カーボンナノチューブの発見

リチャード・スモーリー
ボリス・ヤコブソン

NASAマーシャル宇宙飛行センターにて、ワークショップ「新世紀における地球と宇宙のインフラストラクチャー研究」が開催。
本書の著者ブラッドリー・エドワーズが、研究に参加。

ロケットを使って、20トン×4個のペイロード宇宙エレベーター用ケーブル×2、作業用宇宙船×1、燃料×1)を低軌道(高度300キロメートル)に打ち上げる。
エンジンを再噴射、静止軌道(3万5000キロメートル)まで運び、ケーブルの繰り出しを開始。宇宙船はそのまま噴射を続け、ケーブルの宇宙側の末端にアンカーとして固定する。
これで1トンの作業用クルーザーが上昇可能な宇宙エレベーターが完成する。作業用クルーザーには補強用のケーブルが載せられ、2年半かけて280基使用し補強が行われる。
宇宙側末端には、宇宙船が1基とクルーザーが280基、カウンターウェイトとして機能する。

宇宙エレベーターのケーブルの長さを10万キロメートルとしたら、カウンターウェイトはケーブルの重量の60%の重さとなる。(ケーブル全体のうち、3万5000キロメートルより下側は引力で地球に引っ張られ、3万5000キロメートルより上側は、角運動量によって地球から離れていく)

ケーブルの強度を計算すると6基のクルーザーが同時に稼働可能。平均速度は時速200キロメートル。静止軌道までは7日、ペントハウス・ステーション(宇宙側の先端部)まではさらに5日。帰還も同じ日数がかかる。

クルーザーを動かす電力の供給。ケーブルに伝導性をもたせても、クルーザーに届く前にすべて失われてしまう。

安全上の問題
・宇宙放射線によるケーブルおよび電子機器の損傷

・搭乗者の宇宙放射線被曝
・小天体との衝突によるケーブルの損傷
スペースデブリによるケーブルの損傷
・原子状酸素によるケーブルの劣化
 空気が薄い地球大気の上層部では、酸素ガス(酸素原子二つからなる酸素分子)が二つに分解されて、独立した酸素原子、原子状酸素となる。原子状酸素は、他の原子と結びつきやすく、酸素と結びつく材料のほとんどを浸食する。対策は、原子状酸素によって酸化されない金やニッケルなどの金属でケーブル表面の大気内の部分だけ覆ってしまえばよい。
・雷、熱帯低気圧、ひょう、ジェット気流
・誘起振動
 宇宙エレベーターのケーブルは、約7.2時間の固有振動周期をもっている。地球が自転し、宇宙エレベーターのケーブルが月の近くを通過するとき、ケーブルは月の引力によってわずかに引っ張られる。ケーブルが24時間周期で自然に振動すると、月の近くを通過するたびに、少しずつ大きく揺れるようになる。タイミングの問題もあり、月による影響はそれほど大きいわけではないが、無秩序な相互作用が働いた場合、過度の振動が生じる可能性も否定できない。そのような場合、ケーブルに垂直方向に推進力を加えて、ケーブルの動きを安定させる措置を講じることが必要になる。

・誘導電流の発生
宇宙エレベーターの場合、ケーブルは地球の自転と同期しているため、地球の磁場に対する接触は相対的にごくわずかなものになり、わずかな電流しか生じない。太陽の磁場に対しては高速で通過するが、太陽の磁場は弱く、大きな電流が発生することはない。

・テロリストによる破壊工作
・飛行機や船舶との衝突
・熱によるケーブルの伸縮
・ケーブルの摩耗や亀裂
・ケーブルに蓄積するエネルギー密度
 なんらかの材料を引き伸ばしたとき、基本的にそれはエネルギー蓄積装置となる。それを収縮させるとエネルギーが放出される。ケーブルには極度の張力が働いているため、破断して収縮した場合、大量のエネルギーが放出される。熱エネルギーとしてケーブルの繊維を気化させるか、運動エネルギーとして破片を飛散させることも考えられる。実際に宇宙空間で実験をおこなう必要がある。
ケーブルの重さは1キロメートルあたり約7キログラムなので、損害はほとんど生じないと考えられる。

宇宙エレベーターによる輸送料金は、1キログラムあたり約200ドル(約2万円)。ロケットは1キログラムあたり約1万ドル(約100万円)。


メリット
月面コロニー
宇宙エレベーターは、1基につき毎年1500トンの物資を月や火星に運びあげることができる。人口450人ほどの月面基地を建設するためには4000トンの物資が必要であり、それを維持するためには、年間約1800トンの補給が必要となる。

宇宙太陽光発電太陽電池パネルを低コストで運びあげることができる。
搭乗景色

・ケーブルは見えづらいかもしれない。クルーザーに電力を供給するレーザー光線がまっすぐ伸びている。
上昇速度は車の速度と同じくらい。しばらくすると「昇っている」という感覚が「横に移動している」感覚に変わっていくだろう。無重力になるまでに2日かかる。次第に速度を増し、大気圏を抜けるまでに1時間ほどかかる。
離陸から2時間が経過すると、高度350キロメートルの地球低軌道(LEO)に到達。国際宇宙ステーションの軌道高度(350~400キロメートル)もこのあたり。
この辺りで宇宙遊泳はできない。クルーザーの外に出ると、真っ逆さまに地球に向かって落ちてしまう。
時速200キロメートルまで加速するころになると、地球は小さくなり、半日もしないうちに地球は視界の大部分を占めなくなる。
ジオステーションでは、足元の方向に地球が見える。月は1日に1回ジオステーションに近づいてくる。かなりの速度で通りすぎてしまうだろう。
ジオステーションの先へいくと、ケーブルに働く遠心力が、地球とのあいだに働く万有引力を上回るので、反対向きの重力を感じるようになる。
ここに至れば、上昇するための電力はほとんど必要なくなる。ケーブル末端の宇宙ステーションに停止するために電力が必要となる。
ペントハウス・ステーションに滞在中は、頭上を見上げる方向に地球がある。月は足元の方向にあり、1日1回通過するが、前よりも速く移動している。
ペントハウス・ステーションにはレストラン「ダグラス・アダムス」がある(笑)。

月は地球上の同じ位置から見て25時間で地球を一周する。ペントハウスステーションを出発するとき、25時間に一度のタイミングで出発する必要がある。